- 玉井義臣 著
- 城島徹 編著
- 四六上製 400頁
ISBN-13: 9784865784435
刊行日: 2024/11
「わしは無思想、無節操や。全国の遺児を救済したい、それには、なんぼでも金がほしい。
ただそれだけですねん」
母の交通事故死に直面してプータロー生活から一念発起、半世紀にわたり1100億円を集め、11万人の遺児を支援してきた稀代のファンドレイザーの破天荒な一代記!
目次
はじめに――愛と運に生かされて
Ⅰ
第1章 幼少期と灰色の青春 1935-
職人の家に生まれる/「おまえだけは進学させたる」/
落伍して株屋に
第2章 母の事故死と交通戦争 1963-
危篤を知らせる電報/駆け込んだ病室/36日間の付き添い/
渾身の論文/交通評論家第一号
第3章 テレビが生んだ時代の寵児 1966-
「桂小金治アフタヌーンショー」/岡嶋信治さんとの出会い/
「天国にいるおとうさま」/吉永小百合さんも応援/
堀田力検事と共闘
Ⅱ
第4章 財界の重鎮を会長に 1969-
初代会長に永野重雄氏/資本の論理とぶつかる/
永野会長の器の大きさ/武田豊さんへのバトン
第5章 学生の熱意に支えられ 1969-
走り出した学生/秋田大から始まる学生募金/
475大学が参加/体育会自動車部/
草創期を担った第一世代の若者/秋田、大阪、福岡から/
優良企業内定を覆す/獣医学、神学、農業の専攻者も
第6章 人づくりと文明論 1970-
奨学生のつどい/明日があるから生きるんだ/
心塾/卒塾式と入塾式/ユックリズム/
ブラジルとの交流の夢/ブラジル研修の体験を生かす仲間たち/
文明論のススメ
第7章 あしながさん募金 1979-
亡き姉からの贈り物/森光子さんから電話/
「恩返し運動」を生む/副田義也さん/
フィランソロピー/「両腕」が国会議員に
第8章 愛してくれてありがとう 1984-
25年の年齢差超え/がん告知/残された時間/
新婚生活/7時間の大手術/頭脳と人間性の男/
愛してくれてありがとう
第9章 政官との暗闘 1988-
育英会を乗っ取られる/火がついた奨学生の正義感/
追放のシナリオ/あしながさんから善意の風/
政官の墓穴/恩返し三羽烏/
Ⅲ
第10章 阪神・淡路大震災 1995-
遺児573人を確認/「黒い虹」/
レインボーハウス/天皇皇后両陛下ご視察/
吉田綾香さん/小島汀さん/尹玲花さん
第11章 災害、テロ、自死の遺児たち 1999-
国境を越える「あしなが」/テロの時代/
自死遺児へのケア/首相に訴え/
世界の先進事例となる/政治が動くその日まで/
山本孝史君の遺影が訴えた/大学無償化の訴え結実
第12章 アフリカ遺児支援の「100年構想」 2000-
恩送り運動/世界の「底辺」を見すえる/
ウガンダに寺子屋/司令塔になった奨学生/
アフリカからの留学生/「100年構想」を打ち上げる/
ウガンダの名門大学で講演/奇跡のコラボ/
共同声明/賢人達人会/報道写真家のこと/
遺児の3割が1日1食/留学生のつどい/京都で描く夢
第13章 東日本大震災 2011-
ウガンダで見た津波の映像/タイムズスクエアで街頭募金/
仙台レインボーハウス/世界ファンドレイジング大賞受賞/
シュバイツァー氏とアタリ氏/
エレノア・ルーズベルト・ヴァルキル勲章受章/
吉川英治文化賞受賞/後藤新平賞受賞
第14章 あしなが育ちの人びと 現在
出藍の誉れ/孫正義さんに見込まれた男/
学長になった奨学生/シンボルのイラスト/
どん底から誇りある警察官へ/人生変えたウガンダの子ども/
インドネシアで異文化体験/うれしい消息/多士済々/
外国人スタッフ/たくましい女性スタッフ
第15章 何があっても君たちを守る 未来へ
コロナ不況、緊急支援決定/アンケート調査に衝撃受け/
師走に復活した街頭募金/お母さんたちの悲鳴/
春の風物詩も3年半ぶりに復活/能登半島地震でも本領発揮/
1人でも多く奨学金を/私の教育哲学/あしながを未来に、世界に/
あとがき
玉井義臣 略年譜(1935 – )
主要人名索引
関連情報
半世紀に及ぶ「あしなが運動」の歴史で、玉井さんは1100億円の寄付を集め、11万人の遺児の教育を支えた。東日本津波災害では90億円を集め、速やかに津波遺児を救った。コロナ禍の今日では、国よりも早く1人15万円の緊急教育支援金を全奨学生6500人に送った。この大きな共生の活動を日本に創り出した先駆者は、18年前からアフリカの人材育成にも乗り出している。コロナ禍を転機に共生の時代に向かおうとする今、日本の誇るべき先駆者の歩みをたどれば、日本と世界の明るい未来が浮かび上がってくるだろう。
〈私の教育哲学〉 ――――――― 玉井義臣
教育方針に革命をもたらさないと日本は衰退の速度を速めるばかりだ。
それは、あしなが活動を通して私が獲得した教育哲学だ。
とかく日本では子どもの欠点を指摘し、長所、好きなこと、やりたいことを伸ばそうとしない。ところが欧米は逆で、得意な点、好きな点をほめて背中を押してやる。欠点や弱い点をつついて恥をかかせるようなことはしない。
そうやって、自信をもって人生と格闘する生き方や生き抜くための術を身に着ける方が大切だと思う。
著者紹介
●玉井義臣(たまい・よしおみ)
1935年大阪府生まれ。滋賀大学卒業後、経済ジャーナリストとしてデビュー。母親の交通事故死から被害者の救済問題を提起し、日本初の「交通評論家」として活動開始。TVワイドショー「桂小金治アフタヌーンショー」出演をきっかけに、69年に財界重鎮・永野重雄氏と民間ボランティア団体「遺児を励ます会」等の協力を得て「財団法人・交通遺児育英会」を設立、専務理事に就任する。94年同育英会への官僚天下り人事に抗議する形で専務理事を辞任。災害・病気・自死遺児など全ての遺児の支援のために設立した「あしなが育英会」の副会長に就任。98年、会長に就任。現在は支援の対象を国内に止めず、世界の極貧地アフリカのサブサハラ49か国から優秀な遺児を毎年1国1人選抜し、日本と世界の有数大学に留学させ、帰国後国づくりに参加させ、ひいては世界の貧困削減につなげる「アフリカ遺児高等教育支援100年構想」に邁進している。
69年以降の玉井主導募金額1100億円で高校・大学等に進学した遺児は11万余人に上る。2012年、遺児進学と東日本大震災での迅速な遺児支援活動、アフリカ遺児への教育支援100年構想に対し「世界ファンドレイジング大賞」。2015年、日本及び世界の遺児に教育的サポートを行ない、遺児を貧困の連鎖から解き放つ運動を展開し、人権の擁護に努めたことに対し「エレノア・ルーズベルト・ヴァルキル勲章」。2018年、日本国内外を問わず、現代において後藤新平のように文明のあり方そのものを思索し、それを新しく方向づける業績を挙げたことに対し「第12回後藤新平賞」を受賞している。その他受賞多数。
著書に『愛してくれてありがとう』(2020年)、『玉井義臣の全仕事 あしなが運動六十年』(全5巻、2024年-)、編著に『何があっても、君たちを守る 遺児作文集』(2021年、いずれも藤原書店)他。
【編著者紹介】
●城島徹(じょうじま・とおる)
1956年東京生。ジャーナリスト。81年毎日新聞社入社。社会部記者、アフリカ特派員、生活報道センター長、大阪本社編集局次長などを歴任。明治大学基礎マスコミ研究室主任研究員(2013-23年)。目白大学非常勤講師(2016-22年)。著書に『日中が育てた絵本編集者 唐亜明』(藤原書店)、『謝る力』『新聞活用最前線』(清水書院)、『私たち、みんな同じ――記者が見た信州の国際理解教育』(一草舎出版、地方出版文化功労賞奨励賞受賞)、編著に『いのちを刻む――鉛筆画の鬼才、木下晋自伝』(藤原書店)等。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです