- 中村桂子 著
- 四六変並製 280頁
ISBN-13: 9784865784480
刊行日: 2025/1
生きものとしての「本来の道」をもとめて本の旅に出かけよう!
「生命誌(バイオヒストリー)」の観点から、科学だけでなく文学・芸術など、子どもの本……人間がこれから歩いていく道を照らす多くの本を読み、紹介してきた著者。
「科学者とは」「人間とは」「こころ」「AI」「戦争」……を問う59冊を書評。
目次
はじめに
1 科学とは、科学者とは
2 「環境問題」として浮かび上がった地球の今
3 こころを考える
4 AIはあくまでもAIである──知能と言語に見る人間らしさ
5 生命誌のなかに人類史あり
6 子どもたちへの眼差し
7 こんな切り口が新しい道に続く
8 生命誌と重なる知
9 戦争は日常を奪う「最大の環境破壊」
おわりに――本から学んだことを生かして
関連情報
社会が大きく変わりつつあると実感する。しかもあまりよくない方向に。
ところが、このところ毎日が落ち着かない。まず、日々の天候がおかしい。
日本に生まれてよかったと思うことの一つに、四季の移ろいの楽しみがあるが、最近は変化が急速過ぎて、気分どころか体も戸惑っている。気候変動と呼ばれるこの状況が続けば、戸惑いでは済まず、生態系が壊れ、農林水産業の基盤、つまり日常生活の基盤が崩れる危険性がある。
そのなかで、経済活動はこれまた異常と呼びたくなる格差を生み、社会は不安定になり、挙げ句の果てに世界中を巻きこむ戦争の時代に入っている。
書評を集めて、少し前を振り返りながら、人類の、そして地球のこれからを考えたいと思った。時代の変化は速いので、過去の書評の紹介など意味がなさそうにも思えるが、今につながる重要な指摘に気づかされることも確かだ。変化の底に変わらない基本があると言ってよかろう。それをいくつかのテーマにまとめてみた。
地球に生きものとして生まれた意味を噛みしめ、今という時を抱きしめながら、生きものという「本来の道」を求めて、かつて読んだ本の旅に出かけたのが本書である。科学は日進月歩だが、古いものにかえって本質的な問いがある場合が多いことも見えてきて、心を引き締めての旅になった。 (「はじめに」より)
著者紹介
●中村桂子(なかむら・けいこ)
1936年東京生まれ。JT生命誌研究館名誉館長。理学博士。東京大学大学院生物化学科修了、江上不二夫(生化学)、渡辺格(分子生物学)らに学ぶ。国立予防衛生研究所をへて、1971年三菱化成生命科学研究所に入り(のち人間・自然研究部長)、日本における「生命科学」創出に関わる。しだいに、生物を分子の機械ととらえ、その構造と機能の解明に終始することになった生命科学に疑問をもち、ゲノムを基本に生きものの歴史と関係を読み解く新しい知「生命誌」を創出。その構想を1993年、「JT生命誌研究館」として実現、副館長(~2002年3月)、館長(~2020年3月)を務める。早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任。2024年、第18回後藤新平賞受賞。
著書に『生命誌の扉をひらく』(哲学書房)『「ふつうのおんなの子」のちから』(集英社クリエイティブ)『生命誌とは何か』(講談社学術文庫)『生命科学者ノート』(岩波書店)『自己創出する生命』(ちくま学芸文庫)『生命の灯となる49冊の本』『こどもの目をおとなの目に重ねて』(青土社)『老いを愛づる』『人類はどこで間違えたのか』(中公新書ラクレ)『いのち愛づる生命誌』『生きている不思議を見つめて』『中村桂子コレクション』全8巻(藤原書店)他多数。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです