- 清水万由子 著
- A5並製 296頁・カラー口絵4頁
ISBN-13: 9784865784503
刊行日: 2025/2
個人の「被害補償」の先にある、真の「地域再生」に挑んできた先駆的活動の全体像!
健康・社会・環境の全てを侵す「公害」被害の本質を見据え、公害訴訟の和解金を、「まち」そのものの再生に投入するという画期的発想から立ち上げられた「あおぞら財団」。多くの内部資料を駆使して、その軌跡を初めて詳細に描く。
目次
はじめに
「公害を起こさないまちをつくる」という挑戦
西淀川・あおぞら財団の先駆性
公害地域再生論の枠組み――対象・主体・継承
序章 「公害のまち」から「公害を起こさないまち」へ
一 「公害のまち」西淀川の変容
二 なぜ、西淀川か――公害訴訟から地域再生へ
三 本書の構成と方法
第1章 公害地域再生論の枠組み――対象・主体・継承
一 公害地域の何を再生するのか
二 公害地域再生を進めるのは誰か
三 公害経験の継承と地域再生
四 対象・主体・継承をめぐる論点
第2章 公害地域再生の理念と構想
一 公害反対運動から公害被害者運動へ
二 訴訟の解決
三 「西淀川再生プラン」の提案
四 「西淀川再生プラン」の背景
五 「公害を起こさないまちづくり」の具現化
第3章 あおぞら財団の26年――事業構成と財政から
一 事業構成の変遷――実践の中での模索
二 財政構造の変遷
三 事業・財政の変化がひらいた可能性
第4章 五つの事業部門――実践から何が見えるか
一 地域づくり部門――まちづくりは人づくり
二 環境保健部門――公害患者の健康・福祉ニーズの変化
三 公害経験部門――伝えたい公害経験の記録
四 環境学習部門――「公害を起こさない社会」の担い手づくり
五 国際交流部門――世界の公害被害地域とのつながり
六 事業の実践を通じた質的転換
第5章 公害地域再生に向かう軌跡
一 Ⅰ期(1996-2001年)――ストックの再生・創造
二 Ⅱ期(2002-2006年)――視点の転換
三 Ⅲ期(2007-2012年)――協働関係の構築
四 Ⅳ期(2013年-)――ネットワークの創出と自立
終章 西淀川からの公害地域再生論
一 公害地域再生の成果と課題――対象・主体・継承
二 公害地域再生をめぐる二つの葛藤
三 公害地域再生の「根っこ」にあるもの
あとがき
本書関連年表(1925-2022)/インタビュー調査記録/参考文献
地名・事項索引/主要人名索引
関連情報
本書は、大阪市西淀川区で、公害訴訟を契機に誕生した「あおぞら財団」の活動を通して、公害地域再生=「公害を起こさないまちをつくる」という挑戦が続けられてきた軌跡を描くものである。
今年で設立から30年目を迎えるその軌跡をたどりながら、激甚な公害を経験した地域がどこまで再生を遂げたのか、その到達点と残されている課題、またそれがどのようにして前進してきたかを描き、進むべき方向性を示すことが、本書のねらいである。
小さな地域の経験から、公害を起こした社会が、公害を起こさない社会へと変革する道筋――その困難さも含めて――を浮かび上がらせたい。 (本書「はじめに」より)
著者紹介
●清水万由子(しみず・まゆこ)
1980年生まれ。龍谷大学政策学部教授。
京都大学大学院地球環境学舎博士課程修了、博士(地球環境学)。長野大学博士号取得研究員、総合地球環境学研究所特任助教、龍谷大学政策学部講師、同准教授を経て、2024年4月より現職。
主な著作に、『公害の経験を未来につなぐ――教育・フォーラム・アーカイブズを通した公害資料館の挑戦』(林美帆・除本理史との共編著、ナカニシヤ出版、2023年)、Environmental Pollution and Community Rebuilding in Modern Japan (Co-edited author with Yokemoto, M., M. Hayashi and K. Fujiyoshi,Springer, 2023)、『シリーズ講座環境社会学1 なぜ公害は続くのか――潜在・散在・長期化する被害』(藤川賢・友澤悠季編、新泉社、2023年)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです