- 柏木亨介 著
- A5上製 344頁
ISBN-13: 9784865784527
刊行日: 2025/2
「新しい時代」への民俗学的アプローチ
熊本県阿蘇地域の「人付き合い」に入り、寄合や祭り(祭祀)などを内側からともに経験して重ねてきた、フィールドワークの成果。
農耕という協業のために始まった儀礼は、どのように変化し、現代に受け継がれてきたのか。近代化の中での西南戦争下の農民一揆と打ち毀し、令和の現在も続く「神職の家」の継承と役割、そして熊本地震やコロナ禍などからの復興と鎮魂……近代化・戦争・占領・そしてグローバル化の現在まで、民俗誌で見る阿蘇地域。
目次
はしがき
序論 民俗学と神道
――本書の目的と方法――
第1章 阿蘇はどのように描かれてきたか?
――由緒書(近世)・郷土誌(近代)・民俗誌(現代)――
第2章 「祭り」とは何か?
――祭りの志向性と時代層を読み解く――
第3章 阿蘇神社の近代
――西南戦争下の阿蘇農民一揆――
第4章 「大宮司家」の伝統と近現代
――戦前・戦後を貫くもの――
第5章 平成のムラと神職の30年
――摂社国造神社の氏神社的性格と社家――
第6章 「氏子」の論理
――寄合における総意形成と神社運営――
第7章 現代における「自然崇拝」
――災害復興と地域振興のなかの神社――
結論 神社祭祀はどのように伝承されてゆくか
――社会生活の変遷のなかで――
註/参考文献/参考資料/あとがき/図表一覧/
索引(①一般事項 ②神社・祭神・祭事 ③人名・家名 ④地名・地区名 ⑤資料名)
関連情報
私たちは日々生活するにあたって様々な人間関係を取り結び、社会集団の一員として暮らしている。古来、農耕生活には人びとの協業が必要であり、定期的に行う儀礼によって社会の結束を図ってきた。現代生活も高度に複雑化した政治・経済システムの下で営まれているから、総じて私たちの生活文化は社会のなかで育まれ伝えられてきたといえる。
その社会のあり方は古代から現代に至るまで様々に変わってきたが、とりわけ明治以来、急速な近代化やグローバル化を経験してきた私たちは、社会生活上の関心をどのように祭祀に仮託してきたのだろうか。それを知るには人びとの日常生活の移り変わりに視点を置く民俗学的研究によって進めることが望ましい。
本書は近現代における地方大社の祭祀の伝承過程を民俗誌的記述によって分析し、私たちの社会生活における規範意識の歴史性を見出そうとするものである。 (本書序論より)
著者紹介
●柏木亨介(かしわぎ・きょうすけ)
1976年東京都生。2008年筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(文学)。國學院大學神道文化学部准教授。専攻は民俗学・文化人類学。
主要論文「戦後神道研究における民俗学の位置」(『國學院雑誌』123巻12号)、「戦後社会における旧華族神職家の継承」(『日本民俗学』307)等。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです