日本女性史再考、高群逸枝と「アナール」の邂逅から誕生した女と男の関係史
前人未到の女性史の分野に金字塔を樹立した先駆者・高群逸枝と、新しい歴史学「アナール」の統合をめざし、男女80余名に及ぶ多彩な執筆陣が、原始・古代から現代まで、女と男の関係の歴史を表現する「新しい女性史」への挑戦。各巻100点余の豊富な図版・写真・文献リスト、人名・事項・地名索引、関連地図を収録。本文下段にはキーワードも配した、文字通りの新しい女性史のバイブル。
〈監修者〉鶴見和子/秋枝蕭子/岸本重陳/中内敏夫/永畑道子/中村桂子/波平恵美子/丸山照雄/宮田登
〈編集代表〉河野信子
目次
序 (岡野治子)
Ⅰ 世俗の伝統と信仰のはざまで
1 女の地獄と救い (川村邦光)
2 血盆経の受容と展開 (牧野和夫・髙達奈緒美)
3 キリスト教と女性――ヨーロッパの視点と日本の視点
Ⅰ ヨーロッパの視点・ガラシャ細川玉の実像と虚像 (エリザベート・ゴスマン/訳・水野賀弥乃)
Ⅱ 日本の視点・民間信仰史の脈絡から見たキリシタン像 (加藤美恵子)
4 アマテラスのイメージ・王権・女性 (岡野治子)
Ⅱ 管理の規範と女性の生
5 婚姻と女性の財産権 (久留島典子)
6 「家」における女性の日常と役割――中世後期の各階層をめぐって (後藤みち子)
7 女商人の活動と女性の地位――中世後期を軸に (鈴木敦子)
8 女性の意識と女性語の形成――女房詞を中心に (小林千草)
Ⅲ 性と美と芸能における女性の足跡
9 中世の旅をする女性――宗教・芸能・交易 (細川涼一)
10 御伽草子における男女関係 (佐伯順子)
11 「やまと絵」の始まりは「女絵」だった (田部光子)
12 公卿唄幻視――九州山地に伝えられた流浪の詩 (深野治)
参考文献一覧/図表一覧/索引/地図
関連情報
多くの次元で歴史の転機をなすといわれる中世(後期)、南北朝・室町・安土桃山期。女と男の関係についても、たとえば、高群逸枝が女性の地位の転落と捉えたような婚姻、財産権など管理の規範の変遷が見られてくる。ただここにも、階層ごとの両義性は存在する。さらに、女商人の活躍など多面的な切り口から「女と男の乱」の時代が浮き彫りにされていく。