- 粕谷一希 著
- 四六上製 320頁
ISBN-13: 9784894344570
刊行日: 2005/6
唐木から見える“戦後”という空間
哲学・文学・歴史の狭間で、戦後の知的限界を超える美学=思想を打ち立てた唐木順三。戦後のアカデミズムとジャーナリズムを知悉する著者が、「故郷・信州」「京都学派」「筑摩書房」の三つの鍵から、不朽の思索の核心に迫り、“戦後”を問題化する。
目次
第一章 筑摩書房というドラマ――ひとつの友人共同体
反時代的思想家――小林秀雄との対比
三 人
古田晁の酒
編集者、臼井吉見
編集者、唐木順三
第二章 京都大学哲学科の物語
深田康算教授のつぶやき――創設者たち
気鋭の新人たち
花盛りの哲学科――学生たち
長野・満洲・成田――模索の時代
受 難――西田幾多郎と京都学派の秀才たち
逆 風
第三章 漱石と鷗外
漱石派と鷗外派
唐木順三の彷徨時代――『鷗外の精神』
『現代日本文学序説』と『近代日本文学の展開』
鷗外の問題
第四章 戦後という空間
戦後を象徴するもの
三木清と唐木順三
教養主義の批判の批判
編集者、唐木順三
第五章 反転―中世へ――ニヒリズムとしての現代
戦後の底流にあったもの
ニヒリズムとしての現代
ニヒリズムとしてのナチズム
『詩とデカダンス』の世界
事実と虚構
デカダンスから風狂へ
酒中の真理
筑摩書房と創文社
第六章 中世的世界の解釈学――無用者の発見
唐木順三の歩み
『中世の文学』の構造
鴨長明『方丈記』の世界
兼好法師『徒然草』の世界
世阿弥――すさびからさびへ
生身の自己を押えて「格」に入る
発見された無用者
第七章 批評と思想の間――小林秀雄と唐木順三
『無常』の形而上学――道元
禅問答
道元のなかの詩人と教育者
批評家、小林秀雄の仕事
批評家と思想家
日本回帰
反時代的な生き方
第八章 哲学と社会科学――思想が生まれるところ
哲学から科学へというテーゼ
丸山眞男の場合
大塚久雄の場合
清水幾太郎の場合
思想の生まれるところ
近代化以後
今日の思想状況
科学から哲学へ――思想の生きる場所
第九章 ふたたび京都学派について
田辺元・唐木順三往復書簡の公刊
西田幾多郎という存在
西田幾多郎と波多野精一
和辻哲郎と九鬼周造
残された問題
第十章 信州――郷土の英雄
信濃路、いくたび
庶民史観と英雄史観
『昨日の世界』
補遺1 科学者の社会的責任について
補遺2 不期豊醇そして
補遺3 下村寅太郎の言葉
あとがき
初出一覧
反時代的思索者――唐木順三とその周辺