小川和也
四六上製 256ページ
ISBN-13: 9784894345263
刊行日: 2006/7
“国民作家”の真実
約40年にわたり書き継がれた「鞍馬天狗」に国民的人気を博した作家であり、『ドレフュス事件』『パリ燃ゆ』『天皇の世紀』等のノンフィクションをも著した代表的なリベラリストである大佛次郎。しかし大佛には、戦後封印された戦中の“戦争協力”の随筆が多数存在した。これまで空白とされてきた“国民作家”大佛の、戦中の思索を綿密に辿りながら、ヒーロー「鞍馬天狗」に託された、大佛自身の時代との格闘の軌跡を読み解く野心作。
■第一回「河上肇賞」奨励賞受賞作品
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目次
はじめに
序 章 大佛文学の世界
1 市民社会のヒーロー・鞍馬天狗
2 大佛文学の現在
3 鞍馬天狗のモデル
4 その精神的風土
5 大佛次郎のイメージ
第I章 大佛次郎の 「空白」 と 「満州」
1 ひとつの謎
2 危険な 「第1歩」
3 「満州」 という旋回軸
4 吉野作造の影響とアジア主義
第II章 戦時下の大佛次郎
1 「大東亜」 防衛と特攻隊
2 「国民」 とともに
3 「勝てる筈の戦」 観
4 大衆作家としての苦悩
5 友にするなら鞍馬天狗
6 2つの 「国民」 と大衆作家
7 「銀河が水煙の如く」
第III章 戦後の鞍馬天狗と東京裁判
1 『鞍馬天狗敗れず』
2 32日間の攻防戦
3 「群動」 する日本人
4 東京裁判と鞍馬天狗
5 神輿の話と歴史意識
6 「罪」 の意識と歴史叙述
7 最後の日々
終 章 鞍馬天狗の行方
1 鞍馬天狗は 「夜」 動く
2 パリ・コミューンに鞍馬天狗現る
3 鞍馬天狗を斬る
4 鞍馬天狗の時代
附表 1 戦時下における大佛次郎随筆作品一覧 (1931~45年)
2 『鞍馬天狗』 シリーズ作品一覧 (1924~65年)
あとがき