- 太田素子 著
- 四六上製 448頁
ISBN-13: 9784894345614
刊行日: 2007/2
江戸期農村の子育て――その豊かな人間形成力
近世農村の家族にあった、子どもへの強い情愛と、丁寧な子育て。嬰児殺し、捨子といった子育ての困難、悲しみを直視しつつ、日記などの生活記録を丹念に分析し、共感的な理解に満ちた子ども観、仕事を介した大人 ― 子どものコミュニケーションなど、その豊かな人間形成力を読み取る。現在の不毛な子育ての風景から脱出するためには?
目次
まえがき
序 章 「家と村の人間形成」 への問い
1 もう1つの 「子ども」 の発見
2 農民家族における 「家」 の成立と子育て意識
3 人口動態史からみた近世農村の子ども・家族・村
4 近世における生命観の変容と子育て
第 一 部 日記にみる家族生活と子育て
第1章 近世前期、 奥会津農村の家族生活と子育て
―― 角田藤左衛門の日記 『萬事覚書帳』 と伊南郷の人々 ――
1 課題と史料
2 『宗旨改人別家別帳』 (1714-48) にみる伊南郷農村の家族
3 『萬事覚書帳』 にみる家族と親族
4 子どもへの情愛と生育儀礼
5 「子返し」 の意味するもの
6 子返しの動機
第2章 幕末期、 播州農村の家族生活と子育て
第1節 『高関堂日記』 における家の継承と子ども
1 永富定群 『高関堂日記』 について
2 生命に焦点化する養育慣行
3 生育儀礼と子育てをめぐる社交
4 子育て意識の特徴
第2節 宗門人別改帳にみる家族
1 日飼村の場合
2 黍田村の場合
〈小 括〉 奥会津・播州の日記を比較して
第二部 子返し・堕胎・捨子・貰子
―― 子どもの生命と政治
第3章 養育事業の展開と奥会津農村の子育て
―― 南山御蔵入領の産子養育関係史料を手がかりに ――
第1節 産子養育料を受給する家族
1 課題と史料
2 会津藩産子養育制度と為政者の見た子返しの要因
3 「産子養育手当控」 にみる農民家族の子育て
4 産子養育料がもたらしたモラルの変容と人口回復
第2節 子育てをめぐる家と共同体
―― 藤生村における養育料支給と村落経営
1 村落経営における人口問題とモラル
2 南山御蔵入領の産子養育策と残された史料
3 宗門人別改帳にみる家族と子育て
第4章 教諭活動と習俗の相剋
―― 子育て教諭書 『子孫繁盛手引草』 『子そだてのおしへ』 ――
1 子返し禁止の教諭
2 東北地方南部の農村復興策
3 さまざまな価値の相剋
〈小 括〉 子どもへの愛着と子返しの習俗
第5章 捨子養育と貰子
―― 子どもの労働力と生命の重み
1 近世農村の貰子、 捨子
2 17世紀東北山村の貰子
3 19世紀播州の貰子
4 捨子養育に関する播州の諸史料
第三部 儀礼と文学にみる家族関係
―― 愛着と放任の諸相
第6章 生育儀礼の諸類型と子ども期の概念
第1節 近世社会における生育儀礼 ―― その階層性と地域性
1 子どもと生育儀礼
2 通過儀礼史の中の近世
第2節 祝儀簿にみる農村社会の生育儀礼
1 生命に焦点化する儀礼慣行
2 儀礼の変容からみた産の忌の消失
3 疱瘡見舞の生育儀礼化
4 祝儀簿と子育て慣行の地域性
第3節 宮負家の『祝儀簿』にみる子ども ―― 下総国香取郡松沢村
1 幕末、 下総農村の荒廃と家族・子育て
2 記された儀礼、 記されなかった儀礼
3 通過儀礼に込められた発達観・子育て観
第4節 東播磨の生育儀礼 ―― 三枝家文書を手がかりに
1 諸祝儀帳から
2 安産祝儀から
3 歳祝いと初節句
第7章 幕末、 民間伝承と親子関係
―― 宮負定雄 『太神宮霊験雑記』 『奇談雑史』 を手がかりに ――
第1節 幕末、 東総の風俗荒廃
1 時代背景
2 東総地方の荒廃現象と子育て問題
3 宮負の妊娠・子育て観
4 伊勢参りと女・子どもの旅
―― 『太神宮霊験雑記』 の伝承譚
5 伝承譚に現れた生命観と子ども
―― 『奇談雑史』 の世界
第2節 民間伝承と説話文学にみる出産と子育て
1 出産と出産死への眼差し
―― 安達が原鬼女伝説
2 母性規範の成立
―― 産女・幽霊女房から子育て幽霊へ
3 子どもをめぐる家族関係
―― 養老規範と子育て責任、 感情の絆
4 幕末伝承譚に現れた民衆の家族と産育習俗
終 章 近世農村の子育て文化からのメッセージ
あとがき
初出一覧
図表・史料一覧
索 引