- 田辺徹
- 四六上製 404ページ
ISBN-13: 9784894346666
刊行日: 2008/12
近代日本「西洋美術」界の理論的支柱、初の本格評伝。
東京美術学校(現・東京芸大)教授として、初めて西洋美術史を体系的に導入、さらに私費で『美術週報』誌を創刊して美術ジャーナリズムを育成。黒田清輝、久米桂一郎ら実作者と二人三脚で近代日本に<美術>を根付かせた岩村透の初の本格評伝。
目次
第1章 岩村透
――その輪郭
忘れられた先駆者
名物教授の名講義
アメリカで学んだヨーロッパ憧憬
西洋美術受容の先駆者として
美術と社会の関係 ――ラスキンからモリスにいたる道程
美術ジャーナリズムの育成
複雑な人間像
第2章 文明論と啓蒙の時代
族嫌いの華族
多弁と毒舌に包まれた社会批判
鴎外、 漱石と岩村透の留学
二葉亭四迷と岩村透 ――口語体の文章
異端者としての道程
若き日のアッシジ ――「アッシシの7日」
ついに見たヴェネツィア ――「自分とヴェニス」
第3章 西洋美術史家として
東京美術学校の西洋美術史講義 ――天心・鴎外・岩村透
英語の授業と西洋美術史の講義
生徒の受講ノートから
「フランス彫刻史」
「ドイツ彫刻小史」
イタリアへの関心
「フラ・アンジェリコ伝」
「中世紀伊太利人が自然に対する美感に就て」
「章牌 (メダル) 彫刻家ヴィトーレ・ピサノ (ピサネルロ)」
「モレリの古画鑑定法」
ラファエル前派など初期の業績
岩村透編 『西洋美術史要』 3部作 (イタリアの絵画、 彫刻、 建築)
『第1編 以太利絵画之部』
『第3編 以太利亜彫刻之部』
『第5編 伊太利亜建築之部』
第4章 「美術と社会」 をめぐる思想の系譜
――ラスキンからモリスへ、そしてナポレオン
ラスキン ――芸術論と社会批評の交錯
モリス ――趣味的社会主義と夢想家
ナポレオン ――政府による近代的美術行政
第5章 パリへの誘い
『巴里の美術学生』 ――ボヘミアン礼讃
語り継がれたパリ留学の心得
〈幕間〉 蔵書からみた岩村透
第6章 ジャーナリストとしての行程
啓蒙家としての出発
私財を投じた雑誌経営 ――『美術新報』 『美術週報』 『日本美術年鑑』
美術批評とは何か ――『美術評論』 の果たした役割
「芸界囈 (たわ) 語 (ごと)」 の新しさ
『美術新報』 ――その前期と後期
「ノースコート画談」 ――イギリス美術界の実情
『美術新報』 の改善
「芋洗観」 ――美術と社会の歴史のためのノート
「遠眼鏡」 ――辛口の美術時評
「大辛中辛」 ――ウィットを楽しむ放談集
『美術週報』 ――その歴史的役割
『美術と社会』
「美術館の必要」 (1915年4月)
「美術館の一見解」 (1912年1月)
「英国政府の美術予算」 (1914年12月)
「記念美術館」 (1915年7月)
「時事小言」 から
第7章 最後のヨーロッパ
パリの歴史をみた人
トワイライトのロンドン
第8章 東京美術学校改革運動と岩村透辞任の真相
東京美術学校教授の辞任劇
東京美術学校の規則改正と岩村透、 高村光太郎の主張
「東京美術学校は如何なる改革を要するか」 の要点
組織の問題
人間の問題
正木美校校長と美校卒業生との会見とその記録
終 章 ひとり海辺に眠る
あとがき
岩村透略年譜(1870―1917)
岩村透著作目録
人名索引