レザー・アスラン
白須英子 訳
A5上製 400ページ
ISBN-13: 9784894346765
刊行日: 2009/03
13ヶ国で翻訳、世界が注目するイスラーム世界の新鋭の処女作!
民主主義の多様性
いま起きているのは、西洋近代民主主義とイスラームの「文明の衝突」ではない。イスラームの「内部衝突」と「宗教改革」であり、その民主化の手がかりは「イスラーム」の再定義にこそある。1972年生まれの若きムスリムが、博識と情熱をもって、イスラームの全歴史を踏まえつつ、多元主義的民主化運動としての「イスラーム」の原点を今日に甦らせる!
目次
日本語版への序文
プロローグ 一神教徒同士の衝突
マラケシュ行きの夜行列車で / 宗教とは何か? / イスラーム世界に内在する葛藤
イスラーム関連年表
イスラーム世界地図
第1章 砂漠の聖所 (サンクチュアリ) ――イスラーム勃興以前のアラビア
6世紀のアラビア半島 / 紀元前から崇められていた神 (アッラー) / ユダヤ教・キリスト教・ゾロアスター教のはざまで / ヒジャーズの一神教運動 / 時代の申し子ムハンマド誕生
第2章 鍵を握る人物 ――マッカのムハンマド
カアバ聖殿をめぐる宗教・経済システム / 格差社会の孤児ムハンマド / 社会改革者への神の声 / 部族社会と対立する 「神の使徒」
第3章 預言者の町 ――最初のムスリムたち
砂漠のオアシスに向かう預言者 / 聖遷以前のヤスリブ / ムスリム・コミュニティーの形成 / 画期的な平等制度 / 女性の尊重 / 男性によって歪められた 「言行録 (ハディース)」 の解釈 / ムスリム世界の女性進出
第4章 神の道のために戦え ――ジハードの意味
「ウフドの戦い」 / イスラームは 「戦う宗教」 という誤解 / ジハード思想の歪曲 / ムハンマドは何のために戦ったのか? / 啓典の民との関係 / カアバ聖殿の浄化
第5章 正しく導かれた者たち ――ムハンマドの後継者たち
最後の礼拝 / 預言者死後の混乱 / 後継者をめぐる権力闘争 / 岳父アブー・バクルと親族の確執 / 版図を広げた軍司令官ウマル / クルアーンをまとめたウスマーンの功罪 / 信者たちの司令官アリーの党の形成と内乱 / 「ウンマ」 の分裂とイスラーム学者の台頭
第6章 この宗教は一種の学問である ――イスラーム神学・法学の発達
9世紀の異端審問 / 宗教的権威者の台頭 / 制度化された宗教 / 合理的解釈と伝統的解釈 / 奇跡を実感させる言葉 / クルアーンの解釈をめぐる問題 / 社会の進化とイスラーム法
第7章 殉教者の足跡をたどる ――シーア派形成からホメイニー台頭まで
カルバラーの悲劇 / 反ウマイヤ朝決起 / 抑圧に対して正義のために戦ったシーア派 / ホメイニーの権力掌握のからくり
第8章 祈祷用マットをワインで染めよ ――スーフィーの修行道
ライラとマジュヌーン / 浮世の虚飾から離脱したスーフィズム / 自我消滅の階梯 / 神の想起
第9章 東方の目覚め ――植民地主義への反発
「インド大反乱」 / ままならないイスラーム再興運動 / 「ムスリム同胞団」 の挫折 / 急進的イスラーム主義者クトゥブ / 歴史の流れを変えたワッハーブ派とサウディアラビア
第10章 マディーナへの重い足どり ――イスラームの宗教改革
20年ぶりのテヘラン / イラン・イスラーム革命とは何だったのか? / 民主的イスラーム国家は実現するか? / 非宗教化 (セキュラリゼイション) と非宗教主義 (セキュラリズム) のちがい / 宗教的多元主義の理想
用語解説
原 注
参考文献
訳者あとがき
索 引