- 平井正治 著
- 特別寄稿=髙村薫/稲泉連
- 四六並製 392頁
ISBN-13: 9784894347557
刊行日: 2010/9
髙村薫氏、激賞! 「この国の最底辺はいつまで続くのか」 待望の新版刊行!
ただ一人の語り部が、ついに口を開いた
大坂釜ヶ崎の三畳ドヤに三十年住みつづけ、昼は現場労働、夜は史資料三昧、休みの日には調べ歩く。“この世”のしくみと“モノ”の世界を徹底的に明かした問題作。
目次
特別寄稿
“新しい日本人” ――新版に寄せて 髙村薫
歴史に彼らの声を刻みつけよ ――新版に寄せて 稲泉連
第1章 生い立ち有為転変
大坂の産業と底辺労働者の住む長町 / コレラが猛威を振るった明治18年の長町 / 処刑場跡の千日前 / 博覧会を機に長町とりつぶし / 人力車夫 フィリピンへ行く / 人を見世物にした人類館事件 / 藍屋からおちぶれて教材屋に育つ / 短かった小学校時代 / 戦時統制で倒産し一家分散 / 預け先をとび出して葬式めぐり / 丁稚奉公先をとび出してグライダー乗りに / 大林組の測量技師の測量器をかつぐ / 海軍工廠で水雷に火薬を詰める
第2章 若い命のかぎり
復員して闇屋になる / 出獄戦士歓迎人民大会と岩本党員との出会い / 戦後すぐの松下電器で働く / 松下商法 / 食堂差別と 『七精神』 拒否 / 職場干されながら労組の青年部長 / 混乱期の労働運動のなかで / 1948年の淀川大水害 / 逮捕されて松下を首に / 朝鮮戦争とレッドパージ旋風の中で / 運動の中の矛盾を追及して孤立 / 反党分子とリンチ除名される / 京都の映画撮影所で働く / 撮影所のヤクザ体質
第3章 第一次釜ヶ崎暴動の渦中に飛び込む
釜ヶ崎で暴動が起こった / 暴動の鎮圧 / 釜ヶ崎の暴力手配師とイカサマ博打 / 覚醒剤ヒロポンと日雇い / 「ゲンバク」 「カミカミ」 「オイトオシ」 / 暴動が遺した 「愛隣地区」
第4章 港湾労働の高波に揉まれつつ
港湾労働法ができた背景 / 骨抜きの港湾労働法 / 労働者の事故死きっかけに闘争委員会組織 / 賃上げ要求とストライキ / 賃金格差とバナナ事件 / 危険な積荷 / 身元不明の死者
第5章 よう見てみィ、 これが現場労働や!
飯場の火事 / タコ部屋と呼ばれる飯場 / 人夫出しの飯場 / 駅手配の暴力飯場 / 手配師の辣腕ぶり / 使い方にもコツが要る
第6章 博覧会の輝く電光の影に
第二次大戦後の博覧会ブームと東京オリンピック / 万国博覧会は犠牲者を下敷きにして突っ走る / 原発推進のための万国博覧会 / 万博で外見4階、 内部11階のドヤ出現 / 大阪築城400年祭と今太閤 / 関西国際空港と21世紀協会 / ブランク埋め合わせの天王寺博覧会 / 博覧会が残した天王寺公園の有料化 / 緑を伐採して 「花と緑の」 博覧会
第7章 震災が見せた神戸の素顔
寒い朝、 仕事はどうなる / 置き去りにされた土手下のドヤの町 / 「あんた、 どこの町内?」 ――避難所の差別 / 3Kならまだましという解体作業 / 神戸の被災失業者が安く使われる / 土木と港湾とヤクザと官権政治の町
第8章 APEC大阪開催が残した負の遺産
APECにつき仕事あぶれ / 大阪城周辺の歩行者に鵜の目鷹の目 / 観光ルートにない大阪城見学
第9章 釜ヶ崎365日
釜ヶ崎の住まいの事情 / 結核を媒介するドヤ / ドヤの火事 / 釜ヶ崎の町角で / 「釜」 へくる取材者たち / ブラッド・バンク (ミドリ十字) に血を売る / 釜ヶ崎フグ中毒事件 / 大阪港中国人強制連行をほり起こす会
終 章 平井正治さんを囲んで
黙ってられん! / 平井正治で死ぬ意味 / 釜ヶ崎はなくなるか / 釜ヶ崎労働者の自立のために
関連年表
あとがき