はじめに
第 Ⅰ 部 保護貿易とは何か
―― フリードリッヒ・リストから考える
1 フリードリッヒ・リストの経済学批判
E・トッド
(石崎晴己訳)
3つの世界の市民 / 経済主義に立ち向かう経済学者 / プラグマティズムと節度 /
「国民」 の存在とその輪郭の不明確さ / 現実主義と暴力 / リストとケインズ /
歴史の中の経済
2 政治経済学と世界主義経済学
F・リスト
―― 『経済学の国民的体系』 第11章 ――
(小林昇訳)
アダム・スミス学派の誤謬 ―― 国民国家と政治経済学の否定 / 「永久平和」 という
虚構的前提 / 政治統合と経済統合の時間的順序 / 生産諸力の世界主義的な傾向 /
生産諸力を呼び込むための保護主義
3 「ホモ・エコノミクス (経済人)」 とは何か
〈インタビュー〉
E・トッド
(石崎晴己訳)
子供を育てるのは非生産である / 人類の普遍性と多様性 / フリードリッヒ・リスト
について / 保護主義とフランスの政治状況
第 Ⅱ 部 自由貿易と保護貿易の歴史
4 保護主義と国際自由主義
D・トッド
―― その誕生と普及 1789-1914 ――
(石崎晴己訳)
保護主義の創出 / 経済的ナショナリズムの国境横断的普及 / フリードリッヒ・リスト /
ヘンリー・キャレイ / 結 論
5 ケインズの貿易観の変遷
松川周二
―― 論説 「国家的自給」 をどう読むか ――
ケインズの現実主義 / 1920年代の自由貿易擁護論 / 1930年の保護貿易擁護論 /
金本位制離脱後の保護貿易批判論 / 1933年の論説 「国家的自給」
第 Ⅲ 部 自由貿易こそ経済危機の原因
6 賃金デフレこそ世界経済危機の根本原因
J-L・グレオ
―― ヨーロッパ保護貿易プロジェクト ――
(坂口明義訳)
株主至上主義と賃金デフレ / 家計と政府の過剰債務 ―― 労働の再評価以外
に道はない / ヨーロッパ保護貿易プロジェクト / 自由貿易と保護貿易をめぐるQ&A
7 リベラルな保護主義に向けて
中野剛志
―― 「市場」 を規定する政治 ――
関税からアーキテクチャへ / 国家による自由民主主義の防衛
8 統計の人為性による自由貿易のイデオロギー化
J・サピール
―― 『脱グローバリゼーション』 第1章 ――
(井村由紀訳)
1980―1990年代の自由貿易の波 / GDPの増大=富の増大か? / 環境破壊と
グローバル化の隠れたコスト / 市場のグローバル化で得をするのは誰か? /
タイムラグと競争現象 / グローバル化の中での国内政策への回帰 / 理性に
基づく適度な保護主義のために
9 自由競争教という現代の狂気
西部邁
交換における 「力」 という神秘 / 市場活力という戯言 / イノヴェーションという魔語 /
価格の不安定、 市場の不成立 / デマゴギーによるデモクラシー
10 「自由貿易」 とアメリカン・システムの終焉
関曠野
[自由貿易か保護主義か」 ではない / 自由貿易論の出自と第二次大戦の原因 /
ブレトン= ウッズ体制とは何か / ニクソン・ショックと金融化 / グローバリゼーション
と自由貿易 / 貿易か自給か / 追記 ―― 三つの作り話
11 自由貿易と世界経済危機のメカニズム
〈インタビュー〉
E・トッド
12 自由貿易と民主主義
〈インタビュー〉
―― 経済と政治の一致の必要性 ――
E・トッド
第 Ⅳ 部 TPP参加という愚策
13 「環」 (Trans-) という概念から考えるTPP問題
太田昌国
―― 「環日本海」 と 「環太平洋」 ――
「環日本海」 / 「環太平洋」 の歴史的文脈 ―― 「黒船」 の意味 / TPPの歴史的
文脈 ―― 中南米での教訓 / 対米追従の歴史的文脈 ―― 「環日本海」 と 「環
太平洋」 / ナショナリズムによらないTPP批判を
14 自由貿易と農業・環境問題
関良基
―― マルサスから宇沢弘文まで ――
マルサスと食料安全保障 / 農産物の価格弾力性 / グレーアムの収穫逓増理論 /
環境経済学と外部不経済 / 宇沢弘文と社会的共通資本
15 第一次産業を消滅させて本当によいのか?
山下惣一
―― TPP問題の核心 ――
国家の危機、 国民の無関心 / TPPの当初の目的と米国参加後の変容 /
20年前の農業叩き / 第一次産業の崩壊=国土の崩壊
16 TPPは日本にふさわしい地域協定ではない
〈インタビュー〉
E・トッド
執筆者・訳者紹介