- 新保祐司編
- 菊大判 368ページ
ISBN-13: 9784894348332
刊行日: 2011/12
生誕150周年記念出版! 近代日本の根源的批判者。
西洋による植民地化を逃れるべく西洋化した近代日本。日本の近代の軽薄さを根源から批判し、逆説的に近代日本人の精神的支柱となった巨人の全貌。
『ロマ書の研究』(抜粋)「何故に大文学は出ざるか」等、内村鑑三のテクストも収録!
山折哲雄/関根清三/渡辺京二/新井明/鈴木範久/田尻祐一郎/鶴見太郎/猪木武徳/住谷一彦/松尾尊?/春山明哲/海老名弾正/徳富蘇峰/山路 愛山/山室軍平/石川三四郎/山川均/岩波茂雄/長與善郎/金教臣
目次
序 新保祐司
Ⅰ 内村鑑三と近代日本
〈対談〉内村鑑三と近代日本 山折哲雄+新保祐司
近代日本にあった三つの選択肢〔福澤諭吉・柳田國男・内村鑑三〕 山折哲雄
今、何故内村鑑三か〔キリスト教は西洋の宗教ではない〕 新保祐司
内村鑑三の旧約読解と震災の年の日記〔モーセ五書、歴史書、文学書、預言書〕 関根清三
鑑三に試問されて 渡辺京二
ピューリタニズムを培った十年の彷徨 新井明
内村鑑三の天職論〔『代表的日本人』『後世への最大遺物』を読む〕 鈴木範久
内村鑑三の日本論〔『代表的日本人』を読む〕 田尻祐一郎
内村鑑三と牧口常三郎〔『地理学考』から『人生地理学』へ〕 鶴見太郎
内村鑑三と田中正造〔内村鑑三の政教一致論〕 猪木武徳
内村鑑三と河上肇〔経済と倫理をめぐって〕 住谷一彦
内村鑑三と石橋湛山〔札幌農学校・日蓮・朝鮮論をめぐって〕 松尾尊?
内村鑑三と井上伊之助〔台湾・バイブル樟樹くすのき・聖書〕 春山明哲
Ⅱ 内村鑑三を語る
内村鑑三の勝利 新保祐司
本稿で取り上げられた近代日本人の内村鑑三評――
黒岩涙香/北村透谷/国木田独歩/長谷川如是閑/有島武郎/正宗白鳥/志賀直哉/
安倍能成/前田多門/天野貞祐/武者小路実篤/塚本虎二/荒畑寒 村/大内兵衛/
南原繁/高木八尺/矢内原忠雄/柳田泉/向坂逸郎/内村祐之/大久保利謙/
高田博厚/下村寅太郎/小林秀雄/河上徹太郎/加藤楸邨 /大塚久雄/亀井勝一郎/
太宰治/保田與重郎/松田智雄/氷上英廣/中村光夫/前田陽一/森有正/
関根正雄/森敦/福田恆存/丸山眞男/加藤周一 /安岡章太郎/橋川文三/大岡信
武士的基督教 海老名弾正
必ず後に伝わる人 徳富蘇峰
熱心なる基督教徒にして正直なる愛国者 山路愛山
内村先生の励まし 山室軍平
青年達が感動した毅然たる態度 石川三四郎
内村鑑三によって保たれた残り火 山川均
真に国を憂う「非国民」 岩波茂雄
内村先生と神を信じない私 長與善郎
内村鑑三先生と朝鮮 金教臣
Ⅲ 内村鑑三を読む
近代日本のパウロ〔「内村鑑三を読む」解説〕 新保祐司
武士道と基督教
若しルーテルが日本に生れたならば?
浅い日本人
日本的基督教に就て
何故に大文学は出いでざる乎か
如何にして大文学を得ん乎か
私は無教会主義を……(絶筆)
羅マロ馬書の研究(序、第一~九講、第五六~六〇講)
〈附〉内村鑑三年譜(1861-1930)
関連情報
鈴木範久氏は、『近代日本のバイブル――内村鑑三の「後世への最大遺物」はどのように読まれてきたか』の中で「私は、内村の『後世への最大遺物』を、近代日本の代表的な失敗学の書物とみています。なぜなら、内村鑑三の別の著作『代表的日本人』の題名を借りるならば、近代日本の代表的失敗者 内村鑑三により書かれたものであるからです」と書いている。この文章は、やや誤解を生じるかもしれない。内村は、たんなる「失敗者」ではなく、偉 大なる「失敗者」だからである。内村とは、逆説的な「失敗者」であり、その苛烈なる生涯とは、高きを目指したが故の、偉大なる失敗の生涯であり、 究極的には「勝利」の生涯であった。だからこそ、「内村鑑三の勝利」という寓意画が描かれうるのである。そして、偉大なる成功ではなく、逆説的に 偉大なる失敗から生まれた講演が、近代日本の精神史に大きな影響を与えた。あるいは与え得たところに、近代日本精神史の核心があり、その核心に内 村鑑三という存在の逆説性があるのである。
(編者・新保祐司)