鄭喜成 (チョン・ヒソン)
牧?暁子 訳・解説
A5上製 240ページ
ISBN-13: 9784894348394
刊行日: 2012/01
苛酷な韓国現代史のなかで、“言葉”だけを頼りに生きてきた詩人。
石しか握るものがなくて石を手に握る
典雅な古典的詩作から出発しながら、苛酷な現実のなかで、時に孤独な沈黙を強いられながらも、「詩二篇 胸に抱いているだけで 富める者」という 境地に達した鄭喜成。各時代の葛藤を刻み込んだ詩を精選し、40年以上に及ぶ、その歴程を一望する。
目次
詩を探し求める鄭喜成、十年の苦闘 高銀
『踏 青』(1974年)より
踏 青
凍河を渡りながら
露 天
病床にて
梅軒の旧居に入りて
四月に
歳寒図
甕
森の中に佇んで
啄木鳥
不忘記
変 身
『日暮れの河で鋤を洗い』(1978年)より
母さん、あの鹿はどうなったでしょうか
あのケモノの断末魔のまなざしが
夜明けが来るまでには――戊午年元旦に
日暮れの河で鋤を洗い
この地で生きるために
暗い地下道の入口に佇んで
父さんのことば
道を歩きながら
空を見あげてから床についた日は
ツツジ―チンダルレ
この春のうた
火を焚きながら
石
森
『ひとつの愛しさが別の愛しさに』(1991年)より
ひとつの愛しさが別の愛しさに
清 明
甕屋にて
ぼくらの愛しさは
愛しさがつのる道のどこかで
母さんは ぼくを生んで
沈 黙
八・一五のための太鼓の響き
道
版画家 呉潤を想いつつ
吹雪の中で
密偵の顔
バスを待ちながら
父の眼鏡
童 謡――ある国家保安法違反者の陳述
月光税
ある統一主義者の婚礼の司会
『詩を探し求めて』(2001年)より
ことば
詩が訪れる夜明け
ミンジの花
詩を探し求めて
むしろ詩を胸に埋める
あなたの耳元に届かなかった一言
春のけはい
同期の仲間
夏の日の読書
夕 立
初めての告白
世の中が変わってしまった
『ふり向けば、ふと』(2008年)より
希 望
闇の中で
海辺のベンチ
痕 跡
秋の日
その日も こんなふうに来たらなあ
見知らぬくにでの一夜
小さな畑
案山子
わが詩はわれとともに
詩人の本性
枝川のうた
安 否
わたしだって自分が大いに役立たずになったのを知っている――李珍明詩人の詩を読みつつ
しっぽを切ればつばさが生えるか
エッセイ
あらたな詩への旅立ち
いつも足踏みしている
訳者解説