- 菊大並製 440ページ
ISBN-13: 9784894348400
刊行日: 2012/01
原発問題を、「エネルギー危機」というイデオロギーから問い直す!
目次
■■ 特集:エネルギー・放射能――東日本大震災 III ■■
「エネルギーとは何か」 イバン・イリイチ(訳・解説=鈴木一策)
〈対談〉「東北・被災地をめぐって〔復興を支える家族構造と地域社会〕」
E・トッド+三神万里子
〈鼎談〉「原発即時停止は可能かつ必要である〔戦後日米核同盟の転換〕」
井野博満+吉岡斉+鎌田慧
「エネルギーと地域主権〔なぜ「脱電力」が必要なのか〕」 小澤祥司
「温暖化対策と脱原発政策は両立しうるか」 相良邦夫
「家畜をめぐる断章〔原発震災の陰で〕」 鈴木文樹
「放射性廃棄物の最終処分場はどこに?〔脱原発でも不可避の最大の難題〕」 袴田貴行
「20キロ圏内にて」 大石芳野(写真・文)
「原発事故の真実は伝えられたのか?
〔『なぜ』という問いの封印とメディアの死〕」 木村知義
「海の見えない漁村は安全か〔堤防建設計画の問題〕」 岩崎敬
□短期連載□
被災地/被災者の「声なき声」3 陸前高田の〈今〉を生きる
「陸前高田と盛岡をつなぐ」 斎藤純
「高田病院の生還」 石木幹人/「ぬぐえぬ思い」 大和田美和子/「気仙大工がみた震災」 藤原出穂/「文化財レスキューの現場から」 熊谷賢/「震災の街で」 伊東紗智子/「前を向くということ」 髙澤公省/「忘れない/忘れられないために」 佐藤一男/「歴史は語る」 荻原一也/「『天国風呂」の宿」 鈴木繁治/「ピアノの『ピ』が生まれた日」 田村尚子
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■■ 小特集:チャールズ・ビーアドとは何者か ■■
「世界の眼は後藤新平に注がれている
〔1923年、後藤新平の震災復興計画に寄せて〕」 Ch・A・ビーアド
「Ch・A・ビーアド著『東京市政論』序」(原文・現代語訳) 後藤新平
「後藤新平伯の思い出」 Ch・A・ビーアド
「祖父チャールズ・ビーアドのこと〔『ルーズベルトの責任』日本語版刊行に寄せて〕」
D・F・ヴァクツ(ハーバード大学名誉教授)
「『ルーズベルトの責任』を読む」 開米潤・丸茂恭子
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□□ 来日記念インタビュー □□
「生きることは、書くこと」 D・ラフェリエール
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□ 鼎談 □
「『韓国文学』を超えた『世界文学』〔小説『生の裏面』をめぐって〕」
李承雨+川村湊+金順姫
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□ 緊急寄稿 □
「携帯電話基地局の電磁波による深刻な健康被害
〔日本初の「健康被害」を問う延岡大貫訴訟〕」 古庄弘枝
「世界・琉球・座間味の中の座間味
〔第10回「ゆいまーる・琉球の『自治』」報告〕」 松島泰勝
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■■ 第七回河上肇賞受賞作決定 ■■
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■■ 書物の時空 ■■
●名著探訪
住谷一彦 『海南小記』(柳田國男著)
辻井喬 『ファウスト』(ゲーテ著)
村上陽一郎 『選ばれし人』(トーマス・マン著)
●書評
吉田聡 「語りの彼方における私 『思考の潜勢力』(G・アガンベン著)」
片岡剛士 「『国際人』高橋是清の真価を描く 『高橋是清』(R・スメサースト著)」
楠木賢道 「十九世紀前半における開国・海防論 『松本斗機蔵』(大野延胤著)」
●連載 明治メディア史散策11
粕谷一希 「津田真道とは何者か」
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■■ 連載 ■■
●詩獣たち5
河津聖恵 「かがやける世界の滅亡にむかって〔寺山修司〕」
●風のまにま 陽ざしのまにま――旅の空から5(最終回)
朴才暎 「鞆の浦(日本) 広州・利川(韓国)〔海の道 やきものの道〕」
●孤独――作家 林芙美子4
尾形明子 「下駄で歩いた巴里」
●易とはなにか6
黒岩重人 「図表を読む その二〔河図・洛書とはどういうものか〕」
●天に在り――小説・横井小楠8
小島英記 「『国是三論』の章」
●竹山道雄と昭和の時代9(最終回)
平川祐弘 「僧の手紙」
●近代日本のアジア外交の軌跡16
小倉和夫 「幣原協調外交の対中国政策〔漢口事件までの総括〕」
●伝承学素描24
能澤壽彦 「国作りの古層概念圏」
関連情報
2011年12月16日、野田佳彦首相は、「発電所の事故そのものは収束に至った」と福島第一原発の“事故収束”を宣言した。だが、事態は“収束”どころではない。溶解した核燃料がどのような状態でどこにあるのかすら分かっておらず、放射性物質を閉じ込めるはずの圧力容器、格納容器は破損したままで、「冷温停止状態」も応急手当によって辛うじて保たれているにすぎないからである。すでに放射能に汚染された周辺地域では、復興どころか、避難民が無事、自宅に戻れるかすら見通せない。除染によって生じる放射性廃棄物の貯蔵・処分場所は定まっていない。これは、他の原発を廃炉にする場合にも必ず生じる問題でもある。
政府の事故調査委員会の中間報告によっても、政府・東電が、かなり早い段階で炉心溶融の可能性を把握していたこと、最悪の場合、福島第一原発と第二原発の合計10基の原子炉が爆発する恐れすらあったこと、にもかかわらず、官邸主導で情報統制を行ない、そうしたリスクが周辺住民や国民に伝えられなかったことが明らかにされた。官邸による情報隠蔽により、しなくてもよい被曝をしてしまった住民がいることをどう考えるのか。同時に、政府・東電の発表をそのままに伝えたメディアの報道姿勢も問題にしなければならない。
それにしても、なぜこれほど危険で問題を抱えた原発を全国各地につくってしまったのか。原発事故後に、政府が国内での原発新増設の見直しを検討しつつも、海外輸出については継続した背景にも日米関係が存在している。戦後日本の原子力政策は、占領期にまで遡る日米関係を視野に入れずには理解できない。また、エネルギー資源の多くを輸入に頼る日本において、原発は、「エネルギー危機」を理由に推進されてきたが、「エネルギー不足」と「電力不足」は同じではない。最終エネルギー消費で見れば、電力として消費されるのは全体の約4分の1、原子力の割合は、電力の3分の1、最終エネルギー消費全体の1割程度にすぎない。現在、稼働中の原発は、全54基中6基のみで、定期検査などで4月には全原発が停止する見込みである。もしこの状況を乗り切れば、原発が不要であることの証となろう。
より問題をラディカルに問うイバン・イリイチにしたがえば、「エネルギー」は、必然的に常に不足する。「エネルギー」という言葉を聞けば、常に「危機」を思い出すように、「エネルギー」とは、現行の経済体制が前提とする稀少性をつくりだし、われわれの「欲求」に根本的倒錯をもたらす言説なのである。原発推進こそ、この倒錯の最たるものだろう。
このように「原発問題」、「エネルギー問題」は、われわれに様々な根本的な問題を提起している。そうした問題を一つ一つ真摯に考えるべく、本特集を企画した。
今回の震災に際し、〈震災〉〈原発・環境問題〉〈復興〉〈情報〉の4つのテーマで分類し、
小社刊行物の中から関連するタイトルをいくつか集めてみました。
ご参考になれば幸いでございます。