- 岡田英弘
- 四六上製 432ページ
ISBN-13: 9784894349186
刊行日: 2013/06
アカデミズムの壁を打ち破り、各国史をのり超え、前人未踏の「世界史」の地平を切り拓いた歴史家の集大成! 発刊!
文明には「歴史のある文明」と「歴史のない文明」がある、時代区分は「古代」「現代」の二つでよい、歴史観の全く相容れない「地中海文明」と「シナ文明」、国家・民族は19 世紀以前にはない――根源的で骨太な、“岡田史学”における歴史哲学の集大成。
〈推薦〉T・エルベグドルジ(モンゴル大統領)/M・エリオット(ハーヴァード大学教授清朝史・内陸アジア史)/B・ケルナー=ハインケレ(ベルリン自由大学名誉教授 トルコ学)/川勝平太(経済史家)
目次
はじめに
第Ⅰ部 歴史とは何か、民族とは何か
歴史とは何か
民族とは何か
キリスト教とは何か
歴史のある文明と歴史のない文明
世界史から見た現代東アジア
第Ⅱ部 歴史の定義と国民国家
あらためて歴史を定義する
シナ文明における歴史
「民族幻想」の起源――国民国家は解消しうるか
中国に日本型国民国家は有効か
歴史は国民文化の所産である
第Ⅲ部 歴史観の葛藤
「歴史を持たない文明」同士の衝突
――「反省しない」イスラムと、「負けを考えない」アメリカ――
「西欧vs非西欧」の歴史観の源流
世界史は成立するか
第Ⅳ部 発言集
歴史の捉え方
口頭伝承は歴史たりうるか
国民国家・国史
モンゴル帝国とその後
アラブとユダヤ
世界史断章
第Ⅴ部 わが足跡
私の学者人生
ボンの二年間 1963年10月-1965年7月
ワシントン大学キャンパス日記 1970年5月1日-7日
おわりに
初出一覧
人名索引/事項索引
関連情報
私が東京大学の東洋史学科に入学したのは、朝鮮戦争の始まる直前の1950年春である。卒論には朝鮮史を選んだ。それから研究した満洲語文献で、史上最年少で日本学士院賞を受賞した。またフルブライト奨学金でアメリカに留学してモンゴル語とチベット語を学び、モンゴル年代記という新しい研究分野を開拓した。今度は西ドイツに留学してモンゴル史の研究を続けた。
こうして私の研究領域は、シナ、朝鮮、満洲、モンゴル、チベットと広がったが、そのおかげで、異文化間では史実の認識にギャップがあることがはっきりわかった。文化を越えた真実というものはあるのか、あるとすればどうやったらそこに到達しうるか、これが歴史学における私の不変の課題となった。
私の学問が既存の枠組みにおさまらないのは、私が他人と同じことをしようと思わなかったからだ。すでに他人が歩いた道をなぞっても、行く先は決まっている。それより、自分の目で見、自分で感じたことを追求していく方が、真理に近づく確率は高い。
自らの力を信じ、自ら決する者だけが、道を切り拓いてゆける。国も同じであることを、歴史は語っている。
●岡田英弘(おかだ・ひでひろ)
1931年東京生。歴史学者。中国史、モンゴル史、満洲史、日本古代史と幅広く研究し、全く独自に「世界史」を打ち立てる。東京外国語大学名誉教授。
東京大学文学部東洋史学科卒業。1957年『満文老檔』の共同研究により、史上最年少の26歳で日本学士院賞を受賞。アメリカ、西ドイツに留学後、ワシントン大学客員教授、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授を歴任。
著書に『歴史とはなにか』(文藝春秋)『世界史の誕生』『日本史の誕生』『倭国の時代』(筑摩書房)『チンギス・ハーン』(朝日新聞社)『中国文明の歴史』(講談社)『読む年表 中国の歴史』(ワック)『モンゴル帝国から大清帝国へ』『〈清朝史叢書〉康煕帝の手紙』(藤原書店)他。編著に『清朝とは何か』(藤原書店)他。