- 菊大並製 456ページ
ISBN-13: 9784894349520
刊行日: 2014/01
「生」の自律の可能性を探る
目次
■■ 特集:医療大革命 ■■
これからの医療問題 金澤一郎
日本の医療の現在 信友浩一
看護の歴史から見た患者の自立の道程 川嶋みどり
地域から医療の思想を問う 方波見康雄
イリイチに照らされて〔近代医療とどう向き合うか〕 三砂ちづる
日本の患者は幸せか?〔医療経済から見たプライマリ・ケアの重要性〕 井伊雅子
〈座談会〉医療大革命は可能か
葛西龍樹+高岡英夫+夏井睦+三砂ちづる(コーディネーター)
日本の医療と国際保健における自律への動き 田中剛
生活に根差したお産〔「産むのはあなたである」ということ〕 竹原健二
子どものからだの変容 山田真
子どもの精神保健と発達障害そして問題行動 井上祐紀
薬に頼らない精神医療 八木剛平
パーキンソン病のリハビリテーション〔受け身医療からの脱却〕 三ツ井貴夫
リハビリテーションの光と影〔「目標指向的リハビリテーション」を求めて〕 上田敏
介護保険とは何か 大森彌
看取りとは〔死を共に創りあげる〕 森寛子
医の源に手当てと食養生あり 鈴木一策
藤田紘一郎 五十歳過ぎたら炭水化物をやめなさい
山崎泰広 車椅子の可能性
山口育子 患者本位の医療とは何か
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□□ 小特集:東日本大震災から三年 □□
〈インタビュー〉「いのちを守る森づくり」をやろう 宮脇昭
〈対談〉除染から、福島の復興をはじめよう 赤坂憲雄+山田國廣
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〈緊急インタビュー〉
フランスで今、何が起きているか エマニュエル・トッド
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□□ 小特集:沖縄はなぜ日本から独立しなければならないか □□
松島泰勝・大田昌秀・新川明・三木健・普久原均・
海勢頭豊・石垣金星・仲村渠克・親川志奈子
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パンダは可愛いか?
〔中国四川省山岳地に棲息するパンダ訪問記〕 木下晋(文・画)
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■■ 連載 ■■
川勝平太連続対談 日本を変える! 川勝平太
4 文明のターミナルとしての日本 (ゲスト)中西進
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速報! ダニー・ラフェリエール
アカデミー・フランセーズ会員に 小倉和子
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〈追悼〉マーティン・バナールの早すぎる死 金井和子
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〈インタビュー〉どうすれば経済学を再生できるか
〔最新著『価値の帝国』邦訳刊行に寄せて〕 アンドレ・オルレアン
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□□ 書物の時空 □□
●名著探訪
市村真一 『大国の興亡』(P・ケネディ著)
河野信子 『高野聖』(泉鏡花著)
平川祐弘 『神道のこころ』(佐伯彰一訳)
永田和宏 『免疫の意味論』(多田富雄著)
川満信一 『宗教と人生』(玉城康四郎著)
●書評
片桐庸夫 『語られなかった戦後日本外交』(池井優著)
志村三代子 『GHQの検閲・諜報・宣伝工作』(山本武利著)
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第九回 河上肇賞 受賞作決定
(奨励賞)川口有美子氏「生存の技法――ALSの人工呼吸療法を巡る葛藤」
[選考委員]
赤坂憲雄・川勝平太・新保祐司・田中秀臣・中村桂子・
橋本五郎・三砂ちづる・山田登世子・藤原良雄 (顧問)一海知義
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□□ 連載 □□
●フランスかぶれの誕生――「明星」の時代 3
山田登世子 青春――憂鬱と革命
●ナダール――時代を「写した」男 3
石井洋二郎 文学と政治のはざまで
●文化人類学者の「アメリカ」 3
玉野井麻利子 「フィールド」、あるいは「場所」について
●旧約期の明治――「日本の近代」の問い直しのために 7
新保祐司 第六章 吉野作造の「聖書の文体を通して観たる明治文化」
●北朝鮮とは何か 4
小倉紀蔵 張成沢氏粛清をめぐって
●生の原基としての母性 6
三砂ちづる 家庭内業績主義
●詩獣たち 13
河津聖恵 蛇の口から光を奪へ!〔立原道造〕
●伝承学素描 32
能澤壽彦 日本神学連盟の伝承圏
金子兜太の句 日常
石牟礼道子の句 絶滅と創成
関連情報
現代の産業化社会に根本的な批判を加えた思想家、イバン・イリイチが、Medical Nemesis(1975.邦訳『脱病院化社会――医療の限界』)を刊行し、「医原病」という概念を提起してから40年近くが経とうとしている。
イリイチが提起した「医原病」という概念は、医療自体がさまざまなかたちで「病」を作りだしてしまう逆説を指摘するのみならず、医療が専門家に占有された巨大な制度と化し、ごく普通の人びとは、それに依存することが常態となることを鋭く衝いて、その後の「医」をめぐる議論に大きな影響を与えてきた。
現在、とりわけ日本においては、高齢化が進展し、医療そのもののみならず、介護・看護を通じて、「生」を専門家にゆだねる場面が増大しつつある。そうした事態を財政的に支える保険制度が確立されつつある一方、その裏返しとして、爆発的に肥大化する医療・介護など社会保障のコストが大きな問題となっている。しかし、その財源をいかに捻出するかということは、問題の一面にすぎないのではないか。むしろ、人びとの「生」が専門家に占有されるシステムが、社会の隅々にまで行き渡ろうとしているという現状から、問題を捉え直していかなければならないのではないだろうか。
そうした視点に立ち、現在の「医」をめぐる制度の問題点を探ると共に、「生」の自律の可能性を模索するべく、本特集を企画した。