- 植村博恭・宇仁宏幸・磯谷明徳・山田鋭夫=編
- A5上製 504ページ
ISBN-13: 9784894349636
刊行日: 2014/04
激変の“アジア資本主義”の実像。“豊かなアジア”に向かうために。
植民地から第二次大戦後の解放、そして経済成長をへて誕生した「資本主義アジア」。グローバル経済の波をうけ、さらなる激変の時代を迎えるアジアの資本主義に、レギュラシオン理論からアプローチ。国民経済分析を中心としてきたレギュラシオンに、国際関係や世界経済の分析を重ね、アジア資本主義の実像に迫る。フランス・中国・韓国の研究者との共同研究。
目次
序 言 (山田鋭夫/磯谷明徳)
Ⅰ アジア資本主義の多様性と転換
第1章 構造転換の世界経済と東アジア地域の制度化
――ASEANに注目して―― (平川均)
第2章 アジア資本主義の多様性
――制度的構図と企業のイノベーション活動―― (遠山弘徳/原田裕治)
第3章 東アジア資本主義の制度的階層性とマクロ経済的多様性 (西洋/磯谷明徳/植村博恭)
第4章 アジアにおける共同的な為替レート調整の可能性
――グローバル経常収支不均衡をふまえて―― (宇仁宏幸)
Ⅱ 中国資本主義
第5章 中国経済の発展様式と国際システムの転換
――2008年危機以後を中心に―― (ロベール・ボワイエ/藤田菜々子訳)
第6章 中国経済の輸出主導型成長から内需主導型成長への転換条件
――賃労働関係の変化と社会保障システムを中心に―― (厳成男)
第7章 いわゆる中国経済モデル論の起源,構成と問題点
――代替案のための考察―― (宋磊)
Ⅲ 韓国資本主義
第8章 韓国における金融システム変化と蓄積体制 (梁峻豪)
第9章 韓国における非正規労働の増加と雇用の二重構造化 (金埈永)
第10章 韓国現代自動車の低コスト生産システムの分析
――賃労働関係を中心に―― (金佑眞)
Ⅳ 東南アジア・インドの資本主義
第11章 インドIT産業における高度化と能力構築
――新興国知識集約型産業における後発発展―― (徳丸宜穂)
第12章 マレーシアにおける経済発展と労働 (吉村真子)
第13章 インドネシアにおけるアグリビジネス改革
――パーム油バリューチェーンの分析から―― (賴俊輔)
Ⅴ 日本資本主義
第14章 企業主義的調整の麻痺と社会保障改革 (平野泰朗/山田鋭夫)
第15章 日本における制度変化と新自由主義的政策
――国際比較の観点から―― (セバスチャン・ルシュバリエ)
第16章 賃金デフレと迷走する金融政策 (服部茂幸)
第17章 日本経済の成長体制と脱工業化 (田原慎二/植村博恭)
結 語 (宇仁宏幸/植村博恭)
関連情報
■第二次世界大戦までの「植民地」アジアは多くの場合、西洋によってモノカルチャー型経済を押しつけられていたのであり、戦後に民族的独立を達成したあとも資本主義的な発展軌道にはなかなか乗ることができなかった。ようやく一九七〇年代になって、日本に続いてアジアNIEs(新興工業経済地域)と呼ばれる「四匹の小龍」(韓国、台湾、香港、シンガポール)が高い経済成長を開始し、一九八〇年代にはインドネシア・タイなどASEAN(東南アジア諸国連合)諸国がテイクオフし、さらに一九九〇年代には中国やインドが続いた。
■政府と市場の役割を見据えつつも、本書が焦点に置くのは「制度」である。ここに制度とは、市場・組織・社会から政府政策・国際協定まで広い範囲のゲームのルールを含み、また公式のみならず非公式のそれを含む。そうした制度論的分析をマクロ的な「成長体制」(「蓄積体制」ともいう)の分析と連携させるところにレギュラシオン理論の特徴があるが、本書は主としてこのレギュラシオン・アプローチに立脚している。このアプローチはこれまで国民経済分析を中心とし、国際関係や世界経済の面で手薄であったが、本書は各国の制度・調整様式および成長体制の分析のうえに、さらに国際的・地域的分析を重ねて、この三層構造のうちにアジア資本主義の実像に迫ろうと試みている。
(「序言」より)