- 大田堯 著
- 四六変上製 360頁 口絵1頁
ISBN-13: 9784894349643
刊行日: 2014/4
生きるとは、内なる自分と、自分を囲む外なる世界からくる刺激との間に「折り合いをつけて」、新たな選択を重ねることでは、と考えます。
子どもというのはお母さんの胎盤から生まれるわけですよね。そこから新しい胎盤、つまり「社会的文化的胎盤」に出てくる。
一人一人が違うユニークなDNAを持っています。DNAが違うということは細胞の核にある設計図が違うこと。しかも内外環境からの刺戟に応じて合わせて変わる、いわば「動く設計図」なんです。
その一方で三十数億年の生命の進化の歴史を背負って生まれてくる。まさに自然が与えてくれたもの。そこに命を大事にし合う考え方の大本があると思っているんですよ、僕は。
(本書より)
[月報]曽貧/星寛治/桐山京子/吉田達也/北田耕也/安藤聡彦/狩野浩二
目次
第3巻はしがき
生きて
一人一人違う「設計図」――誕生/待ちわびた夏の川遊び――古里/
ヒューマニズムの気風――旧制広島高等学校/ペスタロッチーに共鳴――教育を志す/
魚雷攻撃で三六時間漂流――一兵卒として/町づくりと教科を連動――本郷プラン/
「生活綴方」と出合う――転機/ガリ版で話し合い記録――「ロハ台」の仲間/
思考の違いを肌で実感――英国滞在/子どもの学習権を問う――家永教科書裁判/
機動隊導入の責任取る――東大紛争/学生一人一人と語らう――都留文科大の日々/
人と人の絆育んで一〇年――子ども図書館/違いを認め合う「仲間」――川口太陽の家/
違う・変わる・関わる――かすかな光へ
戦後の教育と教育学
私の教育研究三〇年――東京大学最終講義
思索と行動、研究と実践の軌跡
=『生命のきずな』への道程 (対話)大田堯+中野光
子どもたちとの未来にむけて
=人と人、人と自然とを結ぶ
見沼フィールド・ミュージアムを呼びかける
〈日中韓の研究交流〉
中国・清華大学フォーラム
日中交流、私の三〇年
「素質教育について」=世界と子どもとを視野に考える(記念講演)
すべての種にそれぞれの設計図がある
――大田堯先生の講演を聴いて感じたこと―― 中国教育学会会長 顧明遠
「人類の知的、精神的連帯の上に」――清華大学フォーラムを終えて思う
韓国・プルム講演記録
教育 無機社会から有機社会へ――大田堯先生の韓国訪問の意義
前プルム農業高等技術学校校長 洪淳明
初出一覧
あとがき
大田堯 略年譜
著作目録
関連情報
◆本自撰集成を推す◆
谷川俊太郎(詩人)
「〈アートとしての教育〉は人間の繊細で微妙なあり方にかかわっています」
中村桂子(生命誌研究者)
「『ちがう、かかわる、かわる』という人間の特質を基本に置く教育」
山根基世(アナウンサー)
「真の教育とは、かくも感動的なアートでありうるのか」
まついのりこ(絵本・紙芝居作家)
「この光こそ、子どもたちの求めているもの。私たちが求めつづけるもの。」
著者紹介
●大田堯(おおた・たかし)
1918年生。教育研究者(教育史・教育哲学)。広島県出身。東京帝国大学文学部卒業。東京大学教育学部教授、学部長、日本子どもを守る会会長、教育科学研究会委員長、日本教育学会会長、都留文科大学学長、世界教育学会(WAAER)理事などを歴任。東京大学名誉教授、都留文科大学名誉教授、日本子どもを守る会名誉会長、北京大学客座教授。
主な著作は『かすかな光へと歩む』(一ツ橋書房)、『教育の探求』(東京大学出版会)、『教育とは何か』(岩波新書)、『地域の中で教育を問う』(新評論)、『子は天からの授かりもの』(太郎次郎社)、『生命のきずな』(偕成社)、『子どもの権利条約を読み解く』(岩波書店)ほか多数。
2011年には、教育を通して人間を見つめ続けてきた大田堯の思索と行動の軌跡を追った映画「かすかな光へ」(監督・森康行)が完成し公開された。2013年10月現在、全国300カ所以上で自主上映が展開中。(写真は映画「かすかな光へ」より)
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです