- 菊大並製 464ページ
ISBN-13: 9784894349674
刊行日: 2014/04
国家の自立と、国家からの自立。
目次
■■ 特集:今、「国家」を問う ■■
〈座談会〉「今、「国家」を問う
小倉和夫+宮脇淳子+小倉紀蔵+倉山満
国家、国民、法服貴族 P・ブルデュー(立花英裕=訳・解題)
国民国家の誕生 宮脇淳子
民族と国家〔「ナシオン」と「民族」の隘路をくぐり抜けて〕 田中克彦
琉球にとって国家とは何か 松島泰勝
現代国家論と日本〔衰退と劣化を免れられるか〕 宇野重規
夢想=妄想としての「仮想国家2.0」 西垣通
軍事と国家 佐?昌盛
紛争する国家 伊勢?賢治
原発と国家〔利権と強権と核武装〕 鎌田慧
衛生思想を見直す〔後藤新平著『国家衛生原理』を読んで〕 西宮紘
国家の強制力は必要であり、同時にその分立は有害である 立岩真也
「人口問題」と日本の立場 速水融
教育と国家〔脱=開発国家への可能性を問う〕 苅谷剛彦
「地方分権」の先にあるもの 増田寛也
国際金融と国家 榊原英資
ボーダーから見える国家の揺らぎ
〔正しい領土教育を目指して〕 岩下明裕
「擬制」としてのメディア
〔体験的メディア論からメディア再生への視点を問う〕 木村知義
井上亮 暦と国家
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□□ 小特集:近世・近代日本の国家観 □□
熊沢蕃山(1619-91) 田尻祐一郎
林子平(1738-93)・工藤平助(1734-1801) 前田勉
渡辺崋山(1793-1841)・高野長英(1804-50) 桐原健真
横井小楠(1809-69)・佐久間象山(1811-64)・勝海舟(1823-99) 松浦玲
吉田松陰(1830-59)・山鹿素行(1622-85) 桐原健真
渋沢栄一(1840-1931) 片桐庸夫
井上 毅(1843-95) 井上智重
内村鑑三(1861-1930) 新保祐司
徳富蘇峰(1863-1957) 杉原志啓
南方熊楠(1867-1941) 松居竜五
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□□ 小特集:水俣から □□
水俣は大きな時代の転換点を迎えている〈インタビュー〉 緒方正人
絶望の先の“希望”――『花の億土へ』(抄) 石牟礼道子
『苦海浄土』誕生の地、壊さる 浪床敬子
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〈緊急特別寄稿〉
ウクライナ問題の真相 木村汎
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□□ 小特集:追悼 辻井喬/堤清二 □□
瀬戸内寂聴/加賀乙彦/岩橋邦枝/石川逸子/福島泰樹/道浦母都子/財部鳥子/
三浦雅士/松本健一/黒古一夫/中西進/尾形明子/岡田孝子/坂本忠雄/
秋山晃男/小沼通二/福原義春/多賀谷克彦/由井常彦/中村桂子
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〈座談会〉
ユーロ危機と欧州統合のゆくえ
ブルーノ・アマーブル+田中素香+福田耕治
+山田鋭夫+植村博恭(通訳・司会)
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■■ 連載 ■■
川勝平太連続対談 日本を変える! 川勝平太
5 江戸文明から考える日本の未来 (ゲスト)芳賀徹
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□□ 書物の時空 □□
●名著探訪
上田正昭 『古代研究』(折口信夫著)
芳賀徹 『文学その内面と外界』『繪畫とその周邊』(寺田透著)
森崎和江 『月白の道』(丸山豊著)
上田敏 『人間の悲劇』(マダーチ・イムレ著)
●書評
新保祐司 『逝きし世の面影』(渡辺京二著)
鈴木一策 『日本とは何か 岡田英弘著作集 第III巻』
●自著再訪
春名徹 《まがいもの》の現代とまっとうな歴史
高頭麻子 表現の規制・圧殺について
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□□ 連載 □□
●フランスかぶれの誕生――「明星」の時代 4
山田登世子 印象派という流行
●ナダール――時代を「写した」男 4
石井洋二郎 印象派という流行
●文化人類学者の「アメリカ」 4
玉野井麻利子 グローバリゼーション(Globalization)
●旧約期の明治――「日本の近代」の問い直しのために 8(最終回)
新保祐司 第七章 福本日南の『清教徒神風連』
●北朝鮮とは何か 5
小倉紀蔵 ソフト・パワーからソフト・ウォーへ
●生の原基としての母性 7
三砂ちづる 「母性保健」と「科学的根拠」〔AMTSLを例として〕
●詩獣たち 14
河津聖恵 死を超えて汽笛は響く〔小林多喜二〕
●伝承学素描 33
能澤壽彦 中野裕道の精神圏
金子兜太の句 日常
石牟礼道子の句 泣きなが原
関連情報
まもなく東日本大震災から三年が経とうとしているが、震災発生から現在に至るまで、被災者支援にも、原発事故後の収拾にも、国家の体をなしていない日本の実態が露呈された。
省みれば、日本という国は、敗戦・占領を経て、米国への政治的・経済的・軍事的依存をますます強め、国家としての自立が不確かなまま放置されている。沖縄問題であれアジア諸国との関係であれ、国家の自立がなされぬことの所産といっても過言ではない。国家の自立なくして、「衛生」(後藤新平)という国家の根本的役割を果たすことはできないのである。
しかし、近代国家の形成と、それに並行した産業化が進展する過程において、伝統的な共同体は分断・解体を余儀なくされ、そうした共同体に支えられた庶民の生の根底が掘り崩され、自生的な伝統的な文化が衰退の一途を辿ってきたことはいうまでもない。近代国家という形態の確立は、人々の「自治」を奪うことと表裏一体でもあったのである。
とはいえ、環境問題のみならず、金融面や情報面にもグローバル化がますます進展しつつある今日、地球上の各国家は、国家間システムの渦中で生き残りを模索することを余儀なくされるとともに、各国は、国境を越えたグローバルな影響の下に置かれざるをえない。そうした現状においては、国家という枠組みが、そのなかで存在する国民やその文化にとって、国際社会と対峙するうえでの「防波堤」の役割をも果たしていることは否めない。一国民であるわれわれは、国家という?外皮?無しにいきなり地球の表面に放り出されているのではなく、自覚の有無にかかわらず、国民国家への帰属を前提とした生を送る状況にあるのだ。
そうした「国家」の役割を無視することなく、国家から自立した「生」を奪回する可能性はあるのか。そのときの立脚点として、国際社会における「公共性」とともに、国内においても、国家に包摂されない「公共」を作り上げることは可能なのか。
本特集では、国民国家成立以前の国家観にまで遡りつつ、国家としての自立/国家からの自立の両面を視野に収めながら、あらためて「国家」について考えてみたい。