岡田英弘
四六上製布クロス装 576ページ
ISBN-13: 9784894349698
刊行日: 2014/05
なぜ、「中国」ではなく「シナ」か?
日本文明とシナ文明のちがいは、“漢字”の役割が異なる点にある!
秦の始皇帝の統一以前から明末、そして清へ。「都市」「漢字」「皇帝」を三大要素とするシナ文明の特異性を明かし、司馬遷『史記』に始まったシナの歴史の書き方と歴史家たちの系譜をたどる。漢字がシナ文明に果した役割とは。
[月報]渡部昇一/湯山明/ルース・ミザーヴ/エレナ・ボイコヴァ
目次
はじめに
第I部 シナ文明とは何か
通史 漢族とシナ社会
シナ文明を解析する
シナから中国へ――シナに見る「国家」の変遷
漢人とはどういう人々か
シナの都市とはいかなるものか
シナの官僚とは何か――私腹を肥やすシステム
第II部 歴史はこうしてつくられた――シナの歴史家たち
はじめに――シナの歴史観はどう形づくられたか
1 司馬遷の『史記』――歴史の創造
2 班固の『漢書』――断代史の出現
3 陳寿の『三国志』――「正統」の分裂
4 司馬光の『資治通鑑』――負け惜しみの中華思想
5 宋濂らの『元史』――真実を覆い隠す悪弊
6 祁韻士の『欽定外藩蒙古回部王公表伝』――新しい歴史への挑戦
第III部 シナ史の諸相
シナは始皇帝から始まった
『三国志』の地政学的考察
魏が三国時代を生き残った理由
三国時代のシナと倭国
“史上最悪の暴君”煬帝の実像
モンゴルを追い出した明の永楽帝の母はモンゴル人?
王陽明の苦悩――官僚の使命と現実のはざまで
発言録
第IV部 漢字とは何か
漢字の正体――マクルーハンの提起を受けて
書き言葉と話し言葉の関係
漢字の宿命
漢字が生んだ漢人の精神世界
日清戦争後の日本語の侵入
現代中国における「和製漢語」の実態
魯迅の悲劇
「時文」と「白話文」
中国の文字改革――表音化への志向と挫折
漢字をめぐる発言録
おわりに
初出一覧
図表一覧
人名・神名索引
事項索引
関連情報
秦の始皇帝の統一以前、つまりシナ以前の時代、黄河中流の洛陽盆地を取り囲んで「東夷・西戎・南蛮・北狄」が攻防を繰り返した。漢人とは、これらの諸種族が混じって形成された都市の住民のことで、文化上の概念である。
始皇帝の統一で生まれた第一のシナは、後漢末の黄巾の乱以降人口が激減し、隋の統一から始まる第二のシナでは、北から入った鮮卑族が新しい漢人になった。モンゴル人が建てた元朝から満洲人の清朝までが第三のシナであるが、元と清の時代、漢人の住地はその植民地であった。中華民国からが第四のシナで、つまり、シナは、時代ごとに支配層も支配範囲も変化してきたのである。
ところが、「中国五千年」は明らかな嘘としても、「シナ二千二百年」の間、皇帝と漢字と都市を特徴とするシナ文明が不変であったように見えるのは、そのようにしか歴史を書くことができなかった歴史家の側に原因がある。そこで、シナ文明の歴史観をつくった司馬遷に始まる歴史家たちに焦点を当てて、シナではどのようにして歴史がつくられてきたかを明らかにした。
(本文より)
●岡田英弘(おかだ・ひでひろ)
1931年東京生。歴史学者。中国史、モンゴル史、満洲史、日本古代史と幅広く研究し、全く独自に「世界史」を打ち立てる。東京外国語大学名誉教授。
東京大学文学部東洋史学科卒業。1957年『満文老?』の共同研究により、史上最年少の26歳で日本学士院賞を受賞。アメリカ、西ドイツに留学後、ワシントン大学客員教授、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授を歴任。
著書に『歴史とはなにか』(文藝春秋)『世界史の誕生』『日本史の誕生』『倭国の時代』(筑摩書房)『チンギス・ハーン』(朝日新聞社)『中国文明の歴史』(講談社)『読む年表 中国の歴史』(ワック)『モンゴル帝国から大清帝国へ』『〈清朝史叢書〉康煕帝の手紙』(藤原書店)他。編著に『清朝とは何か』(藤原書店)他。