- マルティーヌ・リード
- 持田明子 訳
- 四六上製 336ページ
ISBN-13: 9784894349728
刊行日: 2014/06
19世紀フランス文学研究を代表する著者が、新しい読み方を呈示!
「ジョルジュ・サンド」という男性のペンネームで創作活動を行ったオロール・デュパン/デュドゥヴァン。
女性であり作家であることの難しさを鮮やかに描き出した、フランスの話題作。
目次
日本の読者へ
序
第1章 笑いと隠しだて
第2章 筆名
第3章 家族小説
第4章 コランベ あるいは欠けている文字
第5章 作家の名
第6章 彼 それとも 彼女?
第7章 小説
第8章 詩学
第9章 〈自己の物語〉
第10章 コーダ(結び)――サンドの読者、ゾラ
原注
訳者あとがき
参考文献
関連情報
■私は、ジョルジュ・サンドの最も明らかな特異性を作り出しているもの、つまり、最初の小説『アンディアナ』の出版に際し彼女が一八三二年に採用することを選択した、〈ジョルジュ・サンド〉という有名な筆名の持つ特異性の考察から始め、その小説作品全体を読みたいと思いました。
オロール・デュパンが英語の響きを持つ男性の筆名を選択したことは、それが、文章を書く女性にとってこの時代の習慣なり必要性であったからではなく、複雑な家族事情や、〈自分自身の〉名や親子関係との問題点の多いかかわりによるものであることを示そうとしました。そこに彼女の強い意志が感じられるからです。
■ジョルジュ・サンドはこの時代の文壇に申し分ない位置を占め、バルザック、ユゴー、シュー、デュマと並んで、生活の資を十二分に稼ぐ自立した女性でした。彼女は〈フランス文学の偉大な女性〉であり続けるだろうと、ユゴーは明確に言っています。社会主義者としての、フェミニストとしての信念ゆえにサンドは、十九世紀フランスのもっとも偉大な人物の一人です。
また音楽、絵画、植物学、地質学――に対してばかりか、彼女が〈家政術〉と呼んだもの――裁縫や料理がどれほど尊敬に値し、興味深い仕事であるかを彼女は思い起こさせてくれます。
さらには、フロベールが彼女の〈語りの天分〉、つまり、力強さと比類のない想像力で物語を語る能力と呼ぶものを大いに発揮した、その広範な小説の題材に対する関心です。
(「日本の読者へ」より)