- 粕谷一希 著
- 〈解説〉富岡幸一郎
- 四六変上製 400頁 口絵2頁
ISBN-13: 9784894349810
刊行日: 2014/7
日本近現代史をどう見るか?
【推薦】
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〈月報〉清水徹・加藤丈夫・塩野七生・芳賀徹・水木楊
〈題字〉石川九楊
目次
Ⅰ 幕末・明治・大正
面白きこともなき世を面白く――高杉晋作遊記/成島柳北一族/ケーベルと小泉八雲/
森鷗外/木下杢太郎/西園寺公望/後藤新平 他
Ⅱ 明治メディア史散策
Ⅲ 昭 和
河合栄治郎――闘う自由主義者とその系譜/馬場恒吾と石橋湛山/
近衛文麿と吉田茂/小林一三と松永安左エ門/和辻哲郎/三木清/
九鬼周造/内藤湖南/敗者の教訓――『「海ゆかば」の昭和』をめぐって
〈解説〉教養主義の残照とポストモダン 富岡幸一郎
関連情報
粕谷氏は高杉晋作の「面白きこともなき世を面白く」という言葉のうちに「奇妙に明るい虚無感」を見る。そして、そこに一種のダンディズムの趣向があるという。唐木順三が『詩とデカダンス』でいった「デカダンスはダンディズムとニヒリズムの中間にある」という言葉を引いているところなどは面目躍如たるものがある。つまり、高杉晋作は矛盾と逆説に満ちているがゆえに、ある「明るさ、面白さ、あるいは救い」を、明治維新そのものにもたらしたというのが粕谷氏の見方なのである。このような見解は、戦後の歴史学者などからはまず出てこない。明治維新を革命と見るか王政復古と見るか、はたまた帝国主義国家の形成と見るか、という議論がさんざんなされてきたが、その渦中にあった人物にデカダンスという観念を吹き付けることによって、このようなユニークな“歴史像”が生まれる。そのようなことを可能にさせるのには唐木順三の名前が挙げられているように、近代日本の知識人たちの教養主義が大きな影響を与えているのである。
(富岡幸一郎氏「解説」より)
著者紹介
●粕谷一希(かすや・かずき)
1930年東京生まれ。東京大学法学部卒業。1955年、中央公論社に入社、1967年より『中央公論』編集長を務める。1978年、中央公論社退社。1986年、東京都文化振興会発行の季刊誌『東京人』創刊とともに、編集長に就任。他に『外交フォーラム』創刊など。1987年、都市出版(株)設立、代表取締役社長となる。現在、評論家。
著書に『河合栄治郎――闘う自由主義者とその系譜』(日本経済新聞社出版局)、『二十歳にして心朽ちたり――遠藤麟一朗と「世代」の人々』『面白きこともなき世を面白く――高杉晋作遊記』(以上新潮社)、『鎮魂 吉田満とその時代』(文春新書)、『編集とは何か』(共著)『反時代的思索者――唐木順三とその周辺』『戦後思潮――知識人たちの肖像』『内藤湖南への旅』『〈座談〉書物への愛』『歴史をどう見るか』『生きる言葉――名編集者の書棚から』(以上藤原書店)、『作家が死ぬと時代が変わる』(日本経済新聞社)、『中央公論社と私』(文藝春秋)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです