- 多田富雄
- B6上製 192ページ
ISBN-13: 9784894345669
刊行日: 2007/4
能の現代性とは何か
脳梗塞で倒れてのちも、車椅子で能楽堂に通い、能の現代性とは何かを問い続ける一方、新作能作者として『一石仙人』『望恨歌』『原爆忌』『長崎の聖母』など、現代が抱える問題を最深部から結晶化させる作品を生み出す。作り手と観客という両面から能の現場にたつ著者の、能をめぐる思考の集成。
目次
はじめに ――異界からの使者たち
Ⅰ 能の見える風景
薪能の不思議
能と霊魂
聖女小町
『朝長』 の現代性
エコロジーの神遊 ――『三輪』 の謎をめぐって
『姨捨』 の問いかけたもの
脳の中の能面の話 ――鼻欠けの 「深井」
新作能 『一石仙人』
新作能 『原爆忌』 ――第61回原爆忌に寄せて
新作能 『長崎の聖母』
浅見真州の物語性の造形
能楽21世紀の観点
能楽学会に望むこと
Ⅱ 能 評
興福寺勧進能 『海士』 ――鮮やかな場面転換の連打
興福寺勧進能 『景清』 ――障害者の矜持と失意の心理劇
新作能 『不知火』 ――能を超えた能
興福寺勧進能 『井筒』 ――男女を超えた不思議な情念
『紅天女』 ――現代人に感銘を与える能とは
『朝長』 ――悲劇の貴公子、 反戦の哀歌
『定家』 ――個性ぶつかる気迫の舞台
新作能 『利休』 ――能で哲学を語る難しさ
興福寺勧進能 『隅田川』 ――鎮魂の感動をいかに描くか
狂言 『釣狐』 ――名人をもしのぐ狐役者の誕生
Ⅲ 去りしひとに
白洲正子さんのお能の実力
白洲さんの心残り
山姥の死 ――鶴見和子さん
おわりに
初出一覧