- A・コルバン+J-J・クルティーヌ+G・ヴィガレロ=監修
- 鷲見洋一・小倉孝誠・岑村傑=監訳
- A5上製 792ページ
ISBN-13: 9784865780970
刊行日: 2016/11
「男らしさ」の変容を描く初の大企画! コルバン他編大好評企画『身体の歴史』(全3巻)続編!
第Ⅰ巻では「男らしさ」がいかにして創出されたのか、古代から18世紀の啓蒙時代までを扱う。
カラー口絵48頁
目次
日本の読者へ アラン・コルバン(小倉孝誠訳)
序文 アラン・コルバン/ジャン=ジャック・クルティーヌ/ジョルジュ・ヴィガレロ(小倉孝誠訳)
第Ⅰ巻序文 男らしさ、古代から近代まで ジョルジュ・ヴィガレロ(鷲見洋一訳)
第Ⅰ部 古代ギリシア人にとっての男らしさ モーリス・サルトル(後平澪子訳)
第Ⅱ部 古代ローマ人にとっての男らしさ――男(ウィル)、男らしさ(ウィリリタス)、美徳(ウィルトゥス) ジャン=ポール・チュイリエ(後平澪子訳)
第Ⅲ部 蛮族の世界――男らしさの混合と変容 ブリュノ・デュメジル(小川直之訳)
第Ⅳ部 中世、力、血 クロード・トマセ(小川直之訳)
第Ⅴ部 近代世界、絶対的男らしさ (十六―十八世紀)
近代的男らしさ 確信と問題 ジョルジュ・ヴィガレロ(寺田元一訳)
第1章 男らしさとそれにとって「異他なるもの」――逆説的な男性性の描像 ローレンス・D・クリツマン(寺田元一訳)
第2章 僧侶の男らしさ ジャン=マリ・ルガル(寺田元一訳)
第3章 男の熱さ ヨーロッパの男らしさと医学思想 ラファエル・マンドレシ(寺田元一訳)
第4章 ルイ十四世もしくは絶対的男らしさ? スタニス・ペレーズ(片木智年訳)
第5章 戦士から軍人へ エルヴェ・ドレヴィヨン(片木智年訳)
第6章 曖昧なジャンルと演劇的実験 クリスティアン・ビエ(片木智年訳)
第7章 絵画の証言 ナダイェ・ラナイリー=ダーヘン(篠原洋治訳)
第8章 発見された大地の男らしさと未開人 ジョルジュ・ヴィガレロ(篠原洋治訳)
第Ⅵ部 啓蒙と不安な男らしさ
第1章 民衆の男らしささまざま アルレット・ファルジュ(鷲見洋一訳)
第2章 エクササイズの遊戯、娯楽と男らしさ エリザベト・ベルマス(鷲見洋一訳)
第3章 フィクションの男たち ミシェル・ドロン(鷲見洋一訳)
原注
監訳者解説(鷲見洋一)
関連情報
モデルは時代を超えて存続する。長期にわたって戦闘訓練を受け、闘争能力こそわが身の誉れと心得るスパルタの若者と、おなじように長いこと訓練を受け、決闘に勝利してこそ名を成せると信じる若い中世の騎士との間には、遠い係累を考えられるかも知れないのだ。力と支配にかかわるコードを事細かに覚えて身に付けることは、長いこと、男として一人前になるための最初の指標であった。
(「第Ⅰ巻序文」より)
男らしさは古くからの伝統を刻印されている。それは単に男性的であるということではなく、男性の本質そのものであり、男性の最も完全な部分ではないにしても、その最も「高貴な」部分を指す。男らしさとは徳であり、完成ということになる。
フランス語の男らしさvirilit?という語の由来になっているローマ時代のvirilitasは、「精力的な」夫という明瞭に定義された性的特質を有しており、いまだに規範であり続けている。精力的な夫とは体が頑強で生殖能力が高いというだけでなく、同時に冷静で、たくましくてかつ慎み深く、勇敢でかつ節度ある夫という意味である。
それは力強さと徳の理想、自信と成熟、確信と支配力を示す。男は挑戦するものだという伝統的な状況がそこから生まれる。男は「自己制御」と同じくらい「完璧さ」や優越性を目指さなければならない。そしてまた性的影響力と心理的影響力が結びつき、肉体的な力と精神的な力が結びつき、腕力とたくましさが勇気や「偉大さ」を伴う、というように多くの長所が交錯している。
(「序文」より)
●アラン・コルバン(Alain Corbin)
1936年フランス・オルヌ県生。カーン大学卒業後、歴史の教授資格取得(1959年)。リモージュのリセで教えた後、トゥールのフランソワ・ラブレー大学教授として現代史を担当(1972-1986)。1987年よりパリ第1大学(パンテオン=ソルボンヌ)教授として、モーリス・アギュロンの跡を継いで19世紀史の講座を担当。著書に『娼婦』(1978年、邦訳、1991年、新版2010年)『においの歴史』(1982年、邦訳、新評論1998年、新版1990年)『浜辺の誕生』(1988年、邦訳、1992年)『音の風景』(1994年、邦訳、1997年)『記録を残さなかった男の歴史』(1998年、邦訳、1999年)『快楽の歴史』(2008年、邦訳、2011年)など(いずれも藤原書店)。監修した『身体の歴史』(全3巻)のうち『Ⅱ――19世紀 フランス革命から第1次世界大戦まで』(藤原書店)を編集。
●ジャン=ジャック・クルティーヌ(Jean-Jacques Courtine)
1946年アルジェ(アルジェリア)生。15年間アメリカ合衆国で、とりわけサンタ・バーバラのカリフォルニア大学で教える。パリ第3大学(新ソルボンヌ)文化人類学教授を経て名誉教授。言語学・スピーチ分析、身体の歴史人類学。著書に『政治スピーチの分析』(1981年)『表情の歴史――16世紀から19世紀初頭まで、おのれの感情を表出し隠蔽すること』(クロディーヌ・クロッシュと共著、1988年初版、1994年再版)。現在は奇形人間の見せ物について研究し、エルネスト・マルタンの『奇形の歴史』(1880年)を復刊(2002年)、また以下の著作を準備中。『奇形の黄昏――16世紀から20世紀までの学者、見物人、野次馬』(スイユ社より刊行予定)。監修した『身体の歴史』(全3巻)のうち『Ⅲ――20世紀 まなざしの変容』(藤原書店)を編集。
●ジョルジュ・ヴィガレロ(Georges Vigarello)
1941年モナコ生。パリ第5大学教授、社会科学高等研究院局長。身体表象にかんする著作があるが、とりわけ『矯正された身体』(1978年)『清潔(きれい)になる「私」――身体管理の文化史』(1985年、邦訳、同文館出版、1994年)『健全と不健全――中世以前の健康と改善』(1993年)『強姦の歴史』(1998年、邦訳、作品社、1999年)『スポーツ熱』(2000年)『古代競技からスポーツ・ショウまで』(2002年)『美人の歴史』(2004年、邦訳、藤原書店、2012年)『太目の変容。肥満の歴史』(2010年)監修した『身体の歴史』(全3巻)のうち『Ⅰ――16-18世紀 ルネサンスから啓蒙時代まで』(藤原書店)を編集。