- 山本昌知 想田和弘 著
- B6変上製 280頁
ISBN-13: 9784865783452
刊行日: 2022/5
患者さん中心の医療
精神科閉鎖病棟の「鍵」を開けた精神科医、山本昌知。
患者さんを一人の生活者として、人との関係こそが「薬」となる、と向き合う山本医師と、モザイクをかけない患者さんのありのままを撮影し「精神」「精神0」という「観察映画」作品に結実させた映画監督、想田和弘。生きづらさを感じるすべての人へ。
目次
プロローグ(想田和弘)
第一章 歩 み
第二章 「鍵」をはずす
第三章 「人 薬」
第四章 地つづきの世界
第五章 〈こらーる〉という場
エピローグ(山本昌知)
第一章 歩 み
◎山本昌知の歩み
いじめられる人に対して優しかった父のこと/頑張り屋だった母の教訓話/山奥の村に生まれて――“わが家が医者だったら”/精神科の医者になる/病室の鍵を開けて ……ほか
いじめられる人に対して優しかった父のこと/頑張り屋だった母の教訓話/山奥の村に生まれて――“わが家が医者だったら”/精神科の医者になる/病室の鍵を開けて ……ほか
◎想田和弘の歩み
凝り性だった子供時代/郊外型の近代社会に生まれ育って/リクルートスーツで埋め尽くされた就職説明会/ニューヨークで学ぶ/自分のドキュメンタリー映画を撮りたい ……ほか
凝り性だった子供時代/郊外型の近代社会に生まれ育って/リクルートスーツで埋め尽くされた就職説明会/ニューヨークで学ぶ/自分のドキュメンタリー映画を撮りたい ……ほか
第二章 「鍵」をはずす
地域に出ること――医者と患者の関係を変える/閉鎖病棟の「鍵」をはずす/人間として、挨拶から/責任回答方式――根っこは病んでいない/患者さんと看護する側の話し合いで、「鍵」を開ける/映画『精神』ができるまで/〈こらーる〉はみんなでつくる組織にしよう/「目の前の現実をよく見て、よく聞いて、その結果を素直に映画に」/誰のためにモザイクをかけるのか/世界の精神病院のベッド数の二〇%は、日本にある ……ほか
第三章 「人 薬」
施設が良い、悪いではなく「行きたいかどうか」/「人薬」――技術でなく、時と場所をともにしてくれる人がいること/介護は「システム」になじまない/世話をする、してもらうのが人間の本質 ……ほか
第四章 地つづきの世界
「参ったな」/落ちこぼれとして/責任はとれないから、謝るしかない/自分で治す、それに従ってアドバイスする/心と身は縄のようになっている/心と体は分けられない/患者さんの世界とつながっている/幻聴も幻視もそこに「ある」/「他人はみんな“磨き砂”」 ……ほか
第五章 〈こらーる〉という場
一生懸命やれば、周囲がつられることがある/「本人が目的意識をもてない入院は反対」/患者体験者を含む支援チームでの医療/患者さんを中心に置く/「システム」の中で人間は交換可能/一人一人の違いに喜びを感じる/個と個が、網の目のように/目的が正しすぎると、逆におっかない/排除ではなく、折り合いをどうつけるか/お互いに「ご親戚様」――みんな「命」で考える/「ノー」は意思表示 ……ほか
エピローグ(山本昌知)
関連情報
山本 生活するのに十分の十必要で、本人に十分の一しかなければ、周囲が足していくしかないわけですよ。生活していくために必要なものを生活の場で補うための、いろんな人的支援が要るわけやな。それが「人薬」だと思う。
想田 そうですね。精神医療でも、介護でも、「人」が何よりの「薬」になると。山本先生の思想と活動のエッセンスは「人薬」に集約されますね。
山本 結局は、「人薬」なしに、物理的なものや技術的なもので対処しよう、となると、十分の一のままの生活になってしまう。
(本文より)著者紹介
●山本昌知(やまもと・まさとも)
1936年岡山県生まれ。1961年岡山大学医学部卒業。岡山県立病院(当時)、尾道市青山病院勤務を経て、1972年に岡山県精神衛生センター(当時)の所長に就任。青山病院時代の1969年から「精神病院の鍵は誰が締めているのだろうか」「どんな意味があるのだろうか」をテーマに、入院患者、看護者と話し合いを重ね、閉鎖病棟の鍵を開ける取り組みを始める。1997年、同センターを希望退職後、無床診療所「こらーる岡山」を開設。同代表を務めた。2008年、「こらーる岡山」を舞台とした観察映画『精神』(監督・想田和弘)が公開、2020年には映画『精神0』(監督・想田和弘)が公開。著書に『ひとなる』(大田堯との対話、藤原書店)など。
●想田和弘(そうだ・かずひろ)
1970年、栃木県生まれ。東京大学文学部宗教学科卒。スクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒。NHKなどのドキュメンタリー番組を数多く手がけた後、台本やナレーション、BGM等を排した「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。
観察映画第1弾『選挙』(2007)は世界200カ国近くでTV放映され、米国でピーボディ賞受賞。続く『精神』(08)、『Peace』(10)、『牡蠣工場』(15)、『港町』(18)など、いずれも国際映画祭に招待され、受賞多数。これまでにポーランド、韓国、イタリア、ベルギー、カナダ、中国、香港、台湾など、世界各地でレトロスペクティブ特集上映が組まれている。最新作『精神0』(20)は、ベルリン国際映画祭でエキュメニカル審査員賞を、ナント三大陸映画祭でグランプリを受賞した。著書に『精神病とモザイク』(中央法規)、『カメラを持て、町へ出よう』(集英社インターナショナル)、『観察する男』(ミシマ社)、『なぜ僕は瞑想するのか』(集英社/ホーム社)など多数。2021年、27年間在住したニューヨークから岡山県の牛窓に拠点を移す。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです
1936年岡山県生まれ。1961年岡山大学医学部卒業。岡山県立病院(当時)、尾道市青山病院勤務を経て、1972年に岡山県精神衛生センター(当時)の所長に就任。青山病院時代の1969年から「精神病院の鍵は誰が締めているのだろうか」「どんな意味があるのだろうか」をテーマに、入院患者、看護者と話し合いを重ね、閉鎖病棟の鍵を開ける取り組みを始める。1997年、同センターを希望退職後、無床診療所「こらーる岡山」を開設。同代表を務めた。2008年、「こらーる岡山」を舞台とした観察映画『精神』(監督・想田和弘)が公開、2020年には映画『精神0』(監督・想田和弘)が公開。著書に『ひとなる』(大田堯との対話、藤原書店)など。
●想田和弘(そうだ・かずひろ)
1970年、栃木県生まれ。東京大学文学部宗教学科卒。スクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒。NHKなどのドキュメンタリー番組を数多く手がけた後、台本やナレーション、BGM等を排した「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。
観察映画第1弾『選挙』(2007)は世界200カ国近くでTV放映され、米国でピーボディ賞受賞。続く『精神』(08)、『Peace』(10)、『牡蠣工場』(15)、『港町』(18)など、いずれも国際映画祭に招待され、受賞多数。これまでにポーランド、韓国、イタリア、ベルギー、カナダ、中国、香港、台湾など、世界各地でレトロスペクティブ特集上映が組まれている。最新作『精神0』(20)は、ベルリン国際映画祭でエキュメニカル審査員賞を、ナント三大陸映画祭でグランプリを受賞した。著書に『精神病とモザイク』(中央法規)、『カメラを持て、町へ出よう』(集英社インターナショナル)、『観察する男』(ミシマ社)、『なぜ僕は瞑想するのか』(集英社/ホーム社)など多数。2021年、27年間在住したニューヨークから岡山県の牛窓に拠点を移す。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです