- ピエール・ブルデュー 著
- フランク・プポー+ティエリー・ディセポロ 編
櫻本陽一 訳=解説 - A5並製 408頁
ISBN-13: 9784865780161
刊行日: 2015/3
40年にわたる「政治的発言」の主要テクストを網羅!
1960年代の活動当初から社会に介入=発言し続ける「知識人」であった、社会学者ブルデューの真価とは何だったのか。冷戦終結を経て、20世紀型知識人が有効性を失っていく今、全生涯の社会的発言を集成し、旧来型の「社会運動」への挺身でも「国家」の単純な再評価でもなく、その両者を乗り越えてグローバリズムと対峙したブルデュー思想の現代的意味を炙り出す、決定版論集。
目次
訳者序 ブルデュー晩年の構想をいかに読み解くか(櫻本陽一)
編者序 政治参加の固有なあり方、そのテクストとコンテクスト
一九五八―一九六二年――アルジェリア解放戦争期の政治的アンガジュマン――(編者)
第Ⅰ部 1961-1963
1 植民地戦争と革命的意識
革命の中における革命
革命戦争から革命へ
アルジェリア経験再考
サルトル感傷〔サルトルと私〕。感傷〔私が〕。私が、私が、私が。――「全体的知識人」について
第Ⅱ部 1964-1970
2 教育と支配
ジャコバン・イデオロギー
私にとって、六八年五月には二つの顔がある……
教育と研究についての総結集の組織に向けた呼びかけ
民主化政策のためのノート
『遺産相続者たち』および『再生産』の受容をめぐって
第Ⅲ部 1971-1980
3 科学の名による政治的剥奪に抗して
ドクソゾーフ
世論
社会闘争の中の知識人
発言できないものに言葉を与える
幸いなるかな、『エスプリ』において貧しき者よ
『エスプリ』誌とピエール・ブルデューの社会学(編者)
4 支配イデオロギーと科学的自律性――『社会科学研究紀要』の誕生
『社会科学研究紀要』創刊宣言
科学的方法と対象の社会的ヒエラルキー
『社会科学研究紀要』第五/六号合併号巻頭の辞
支配イデオロギーの生産
趣味の解剖学
アフガニスタンについて語ってみよう……
一九七〇―一九八〇年――政治参加とイデオロギー的転換(編者)
第Ⅳ部 1981-1986
5 政治の素人とプロフェッショナル
政治は、「彼ら」のものである
裏切られた約束――1936年と1956年の後に、なお1981年も裏切るのか?
左翼の絶対自由主義的伝統の復権を
知識人と権力――ポーランド連帯支援についての回顧
権力の仕掛けを暴きだす
あらゆる人種主義は、本質主義である
ミシェル・フーコーについて――「特定領域の知識人」のアンガジュマン
第Ⅴ部 1984-1990
6 教育と教育政策――国家政策に関する二つのレポート
大学――王様は裸だ
未来の教育のための提言
コレージュ・ド・フランス提言の20年前
コレージュ・ド・フランス報告書――ピエール・ブルデューによる説明
企業戦士になることの拒否
教科教育内容の検討のための諸原則
レミュロー校の生徒たちへの手紙
第Ⅵ部 1988-1995
7 政治的なものへの幻滅と理性の現実政治
市民に本来ある徳
社会的世界についての知識によって批判を基礎づける
我らが悲惨な国家
8 ヨーロッパレベルの闘争に向けて――集団的知識人の再創造
知識人インターナショナルのために
歴史は、東から立ち上がる――スターリンもサッチャーもない、真理の政治のために
保守革命の言語
精神の壁
知的な責任――ユーゴスラビア戦争における言葉
恐怖の円環からどのように脱出すべきか?――『限界における恐怖――ラテン・アメリカにおける、国家テロと抵抗』書評
普遍的なものの歴史的形態に役立てるために
作家議会――何をするために?
第Ⅰ巻注
第Ⅰ巻初出一覧
関連情報
政治学院で教えられる「政治科学」は、社会学的調査の近代的なテクニックが登場した後には、生き延びるはずのないものであった。しかし、それは、御用の学問であることを無視し、与えられたがままのデータへの実証主義的な服従と結びつき、政治のたしなみと対立するあらゆる問いと問いかけを排除し、投票行動、投票の意思あるいは投票の説明を、開票前にただ単に記録することに切り縮められている。かくして世論についての科学が、科学に関する世論にかくも完全に順応しているのである。
(本書より)
著者紹介
高等師範学校卒業後、哲学の教授資格を取得、リセの教員となるが、55年アルジェリア戦争に徴兵。アルジェ大学助手、パリ大学助手、リール大学助教授を経て、64年、社会科学高等研究院教授。教育・文化社会学センター(現在のヨーロッパ社会学センター)を主宰し学際的共同研究を展開。81年コレージュ・ド・フランス教授。
主著『ディスタンクシオン』『再生産』『芸術の規則』『パスカル的省察』『科学の科学』『自己分析』『国家貴族』(以上邦訳、藤原書店)ほか多数。
【編者】
●フランク・プポー(Franck Poupeau)
教育社会学者。CNRS(フランス国立科学研究センター)研究員。著書 Une sociologie d’état. L’école et ses experts. Paris: Raisons d’agir, « Cours et travaux », 2003, Les mésaventures de la critique, Paris: Raisons d’agir, 2012.など。
ティエリー・ディセポロ(Thierry Discepolo) 1990年、マルセイユを拠点とする出版社アゴンヌ社を共同で創業、同時に創刊した『アゴンヌ』誌の発行人を務める。著書La Trahison des éditeurs, Agone, 2011.など。
【訳者】
●櫻本陽一(さくらもと・よういち)
1966年、埼玉県生まれ。1996年、パリ・ソルボンヌ(パリ第4)大学DEA(研究深化学位)取得。1999年、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻単位取得退学。和光大学現代社会学部准教授等を経て、現在、社会科学高等研究学院(EHESS)ヨーロッパ社会学センター所属。社会学専攻。訳書にブルデュー『メディア批判』(藤原書店、2000年)、論文に「フランス知識人の歴史と現在――ドレフュス事件と1995年12月」(三浦信孝編『普遍性か差異か』、藤原書店、2001年)、「グローバルな社会運動の可能性――P・ブルデュー」(三浦信孝編『来るべき〈民主主義〉』、藤原書店、2003年)他がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです