ナイチンゲール――「空気感染」対策の母

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  • 向野賢治 著
  • A5並製 272頁
    ISBN-13: 9784865783636
    刊行日: 2022/10

「近代看護の母」は、「“空気感染”対策の母」でもあった!

19世紀半ばのロシア帝国とオスマン帝国等の戦争の地クリミアで、傷病兵たちの劣悪な環境を改善し、劇的に治療効果を高めたポイントとは何だったのか。
新型コロナウイルス対策として「換気」が重視される今、感染制御医の視点からナイチンゲールの先駆性に新しい光を当てる渾身作。


目次

はじめに

序章 ナイチンゲールの生涯
 1 看護師になるまで
 2 クリミア戦争での看護管理者としての活躍
 3 衛生改革の道へ

第Ⅰ部 家族、病気、宗教
第1章 ナイチンゲールの家系
 1 母方
 2 父方
第2章 ナイチンゲールの病気は何だったのか
第3章 ユニタリアン派の人々に支えられて
 1 ユニタリアンの始まり
 2 レオナルド・シスモンディ(1773-1842)
 3 サミュエル・ハウ(1801-76)
 4 ハリエット・マーティノ(1802-76)
 5 ウィリアム・ラスボーン六世(1819-1902)
 6 ナイチンゲールの周囲にいた人々を想って

第Ⅱ部 「空気感染」対策の母
第4章 ナイチンゲールの感染対策の先進性
 1 湿性生体物質が身体、環境、空気を汚染する
 2 清潔、清掃、換気で感染病原体を除去する
〈コラム〉エアロゾルについて
第5章 ジョン・スノウ――もうひとりの感染対策の先駆者
 1 一八五四年、ロンドン、三人の歴史的人物
 2 コレラ・アウトブレイクの概略
 3 そのときナイチンゲールは……
 4 そのときジョン・スノウは……
 5 スノウ、アウトブレイクの調査を開始する
 6 ウィリアム・ファー――ナイチンゲールとスノウ両者にかかわる人物
 7 なぜ売春婦が多かったのか?――酒とコレラの法則
 8 ジョン・スノウvs「瘴気説」派
 9 スノウはクリミアでの感染流行をどうみていたのか?
 10 ジョン・プリングル卿の考え方
 11 ナイチンゲールとスノウはなぜ出会わなかったのか?
 12 二人が出会っていれば
第6章 理系女子ナイチンゲール
 1 フロレンス・ナイチンゲールの数学学習史
 2 モンスター――心に渦巻く異常なエネルギー
 3 データの本源的蓄積始まる――ヨーロッパへ
 4 ナイチンゲールが教える、リケジョの五つの法則
 5 行動的統計学者への道
〈コラム〉ケトレについて
      鶏頭図とは?――英軍兵士の死亡率の時系列グラフ
      統計からAction(行動)へ
第7章 スクタリで何があったのか
 1 はじめに
 2 歴史背景――クリミア戦争
 3 クリミア戦争の経過と、イギリス軍兵士死傷者の発生状況
 4 兵舎病院について
 5 入退院患者数
 6 流行曲線と感染マップ
 7 ナイチンゲールの介入
 8 医療崩壊の法則
 9 衛生委員会の介入
 10 疾患別死亡者数から、兵舎病院における院内感染を評価する
 11 空気感染対策の原理発見
 12 わたしは忘れない

おわりに

関連情報

2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は、またたく間に世界に拡散し、多くの人を苦しめて来た。この国難ともいえる大変な時期に、ナイチンゲールの思想と人生について著書を出版できることに、私は少しだけ運命的なものを感じている。というのも、このコロナを解決する道がナイチンゲールの言葉の中にあると思うからだ。
どういうことかと言うと、それはナイチンゲールが教える感染対策の中にある。
一言で言えば、換気の重要性である。なんだと思われたかもしれない。すでに、至る所で換気策はとられているではないかと。
ちょっと待っていただきたい。本当にナイチンゲールが教えた正しい換気策がとられているかといえば、けしてそうではない。しかも、ナイチンゲールの思想自体が良く理解されてないと私は思う。
(本書より)

著者紹介

●向野賢治(こうの・けんじ)
1951年生。鹿児島大学医学部卒業。医学博士。福岡大学医学部微生物学教室助手,UCLA腫瘍外科研究員,福岡大学第二内科講師を経て,現在,社会医療法人大成会 福岡記念病院感染症内科・リウマチ科部長,感染制御部長。
主な著作に『いいことだらけの抗菌薬マネジメント10のルール』(メディカ出版)。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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