- エマニュエル・トッド 著
- 平野泰朗 訳
- 四六上製 392頁
ISBN-13: 9784894341494
刊行日: 1999/10
グローバリズム経済論への根本的批判!
人類学的視点からヨーロッパの多様性を実証し大反響を呼んだ『新ヨーロッパ大全』の著者が、国境を超える経済の現実に人類学・人口学的手法で迫る。人類的基盤を閉脚する経済学者の議論をラディカルに批判、自由貿易とヨーロッパ統合の幻想を打ち砕く問題作。
目次
日本の読者へ
序 危機の本質
文化的下意識 / 人類学的無意識 / 共同的信念のゆらぎと無気力感 / フランス、 ゼロ思考 と階級闘争の間で
第1章 経済学者のための人類学入門
人類学的観点からみた母胎 / 個人主義の水準 / 共同的信念と経済的管理 / 共同的信念の起源
第2章 文化の天井
1963年から1980年の衰退 / ヨーロッパ、 アジアに追い越されたアメリカ / アメリカ技術の支配の終焉 / 直系家族と核家族の教育的潜在能力 / 二つのフランスと教育 / 直系家族社会の人口 減少の傾向 / あらゆる社会にとっての限界か
第3章 二つの資本主義
プラグマティックな経済観と資本主義の二重性 / 個人主義的資本主義と直系家族型資本主義 / 文化水準と生産性 / 直系家族型資本主義は本来的に保護主義的である / 日本対ドイツ、 族内婚と族外婚の伝統 / アメリカの経済的離陸に対する直系家族的文化の貢献
第4章 90年代の転換 ――アメリカ経済はダイナミックか
メディアの時代、 研究者の時代 / 財をつくるのか、 雇用なのか / GDPの超自然性 / 富そして通貨の力 / 経済大国の購買力平価 / 幼児死亡率による証明 / ポスト産業社会論の誤り / アメリカ工業の赤字 / 90年代の真の転換――直系家族型資本主義の窒息 / 不安定 / 楽観的なシナリオ――技術の突破口が知的停滞を補償する / 悲観的シナリオ――知的危機が技術を弱体化させる / アメリカの真の比重
第5章 不平等への逆流と国民の分裂
識字普及から平等へ / 高等教育から高等人間へ / 社会文化的破砕と国民の多様性 / フランスの反ポピュリズム / 内的現象としての国民の分裂――反国民主義 / あらゆる国にとっての矛盾――平等と不平等の並存
第6章 自由貿易のユートピア
世界需要の諸国間調整 / 自由貿易と過少消費 / アジアの夢 / 切り詰めの進む世界 / 国民間の非対称性――(1)先進諸国 / 国民間の非対称性――(2)南北関係 / 貿易開放による新しい不平等理念の現実化 / 自由貿易は第一原因ではない / なぜアメリカは自由貿易を続けるのか
第7章 通貨のユートピア
各国通貨の存在 / インフレ率と社会構造 / 人口動態、成長率および固定相場 / 人口の停滞と全体需要の不足 / 各国の多様化 / 一神教からマネタリズムへ / 二つの資本主義と二つの貨幣概念
第8章 引き裂かれたフランス
フランス革命以来の二つのフランス / マーストリヒトによって明かされたもの / 社会階級と人類学上の地域 / 融合された基本構想――資本流通の自由と通貨管理の硬直性 / どこにもないバラデュール流やジュペ流の助成金 / 大西洋を渡る金融と旧大陸規模の通貨管理
第9章 ゼロ思考の社会学
神話化された資本主義 / 経済を犠牲に捧げる資本主義 / 概念上の飛躍――単一思考からゼロ思考へ / 新しい文化的階級と彼らの特権 / 経済的苦痛の程度 / イデオロギーの死とゼロ思考の誕生 / デュルケムとマルクス
第10章 紛争への回帰、 信念への回帰
経済と文化の切断 / マルクスの誤り――アングロサクソン世界はフランスではないし、 その逆もまた然り / フランスにおける階級闘争――(1)国民戦線 / フランスにおける階級闘争――(2)1995年の中間階級の登場 / 階級対立と世代対立 / 階級対立と国民感情 / 歴史の不確実性とフランス人の自由
結 論 信念と経済活動
アメリカの柔軟性と混乱 / ヨーロッパとグローバリゼーション――概念の混乱と問題の累積 / フランスのチャンスは潰された / 政治主導の単一通貨から受動主義の単一通貨へ / 盲目は自然なことである / 保護主義の未来 / 信念と行動
原注
図表一覧
訳者あとがき