- エルヴェ・ル・ブラーズ+エマニュエル・トッド 著
- 石崎晴己 訳
- 四六上製 440頁 カラー地図127点
ISBN-13: 9784894349629
刊行日: 2014/3
グローバルに収斂するのではなく多様な分岐へ
高学歴化、女性の社会進出、移民の増大、経済格差の拡大、右傾化……
アメリカの金融破綻を預言した名著『帝国以後』を著したトッドが、最新の技術で作成されたカラー地図による分析で、未来の世界のありようを予見する!
目次
序説
1 社会的変化の加速化――1980年から2010年
変動の原動力/教育階層構造の逆転 新たな不平等/風俗慣習革命/
教会にとっての終点/女性に自由を/文化的決定作用とその経済的帰結/
人口統計学者の楽観論/社会の無意識的楽観論/新たな都市文化か?
2 より精密にしてより総合的な地図作成法
第1章――人類学的・宗教的基底
基本的二極対立 核家族と複合家族/
家族システムとは何か? 村、小集落、そして平等性/
いくつもの例外からなるフランスの半分 フランスの家族システムの複雑な分布/
1791年から1965年までの、フランス本国の宗教的分裂/
シュンペーターと保護層/フランスの国土における統合水準/
個人主義と社会統合主義/保護層としての共産主義/
死滅した共産主義、「ゾンビ・カトリック教」
第2章――新たな文化的不平等
局面1 核家族と伝播拡散/局面2 直系家族の登場/
局面3 「ゾンビ・カトリック」と都市/教育の落ちこぼれ/
読み書きの困難/締め出された技術教育的中間諸階級/
経済中心主義 対 教育/マイケル・ヤングと教育の予測
第3章――女性の解放
女性の先行の地理的分布/工業と性的保守主義/
カトリック教とフェミニズム/男性の避難所としての都市/
カトリック教と男性たち/西部の女性たち/
2008年における都市への問いかけ/
パートタイム労働 カトリック教への復帰
第4章――家族は死んだ、家族万歳
2006年の出生率/宗教よさらば、家族よようこそ/
女性の教育と低い出生率/都市効果/小集落、小都市、郊外/
結婚の変貌/母親の年齢/婚外出生 カトリック教の終焉と家族の復帰
第5章――あまりにも急速な、脱工業社会への動き
心性の優位/経済のグローバル化による脱工業社会への移行の歪み/
フランス本国の脱工業化/工業は都市の外へ/
工業を救う、ただし脱工業社会で
第6章――民衆諸階級の追放
やはり直系家族/新たな都市貴族/新たな都市貧困/
「中間的」職業は空間的に中間的である/事務・商店労働者、女性、国家
第7章――経済的不平等
OECDからマルクスへ/アダム・スミス、平等、道徳/
宗教的特権/共産主義以後の鬱病/富裕者の中の富裕者/
どれほど貧しいのか?/シングルマザー/共産党、教会、平等
第8章――移民流入とシステムの安定性
撹拌混交の場所、安定性の場所/パリの役割/
縦の断層 プランタジネット帝国 対 ロートリンゲン/
家族名のたどる道/外国人の到来/最近の到来者/
外国人と帰化者 拡散の停止/拡散の休止 混交婚による証明/
都市の新たな役割
第9章――全員、右へ
オランド、教会、国民戦線/極左の消滅/
サルコジとバイルー コンプレックスをかなぐり捨てた右派と心ならずも右派/
長期的に見た右派とカトリック教の動向/
「ゾンビ・カトリック教」と2005年の国民投票
投票の決定における階級、年齢、地域
第10章――社会主義とサルコジ主義
家族の浮上/東と西の時差 社会主義的農村性とサルコジ主義的脱工業化/
左派の都市/右派の国境地帯/左派、右派、平等
第11章――国民戦線の変貌
不意の出現/村から郊外住宅街へ/伝播と凝固/
父親ル・ペン、停止する/サルコジ、極右を立て直す/
娘ル・ペンと民衆諸階層/移民よさらば/起こり得る変遷
結論
[付]著者インタビュー――エマニュエル・トッド氏とエルヴェ・ル・ブラーズ氏に聞く
訳者解説(石崎晴己)
原注
訳注
地図の出典一覧
関連情報
著者紹介
1943年生。人口統計学者・歴史学者。ブルターニュ北部(コート・ダルモール県)出身。理工科学校、パリ大学理学部に学ぶ。フランス国立人口統計学研究所(INED)研究主任。理工科学校、パリ政治学院(シヤンス・ポ)、EHESS(社会科学高等研究院)、ENA(国立行政学院)などで教鞭をとる。
主な著作に、Les Trois France, Odile Jacob-Le Seuil, 1985.(三つのフランス)、Le Sol et le Sang. Theories de l’invasion au XXe siecle, Editions de l’Aube, 1993. (地と血――二十世紀の侵入理論)、Naissance de la mortalité : l’origine politique de la statistique et de la demographie, Gallimard-Le Seuil, 2000. (死亡率の誕生――統計学と人口統計学の政治的起源)、The Nature of Demography, Princeton University Press, 2008(人口統計学の本性)。
●エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd) こちらをご覧下さい。
【訳者】
●石崎晴己(いしざき・はるみ)
1940年生まれ。青山学院大学名誉教授。1969年早稲田大学大学院博士課程単位取得退学。専攻フランス文学・思想。
訳書に、ボスケッティ『知識人の覇権』(新評論、1987)、ブルデュー『構造と実践』(藤原書店、1991)『ホモ・アカデミクス』(共訳、藤原書店、1997)、トッド『新ヨーロッパ大全』(共訳、藤原書店、1992-1993)『移民の運命』(共訳、藤原書店、1999)『帝国以後』(藤原書店、2003)『文明の接近』(クルバージュとの共著、藤原書店、2008)『デモクラシー以後』(藤原書店、2009)『アラブ革命はなぜ起きたか』(藤原書店、2011)、レヴィ『サルトルの世紀』(監訳、藤原書店、2005)、コーエン=ソラル『サルトル』(白水社、2006)、カレール=ダンコース『レーニンとは何だったか』(共訳、藤原書店、2006)など多数。
編著書に、『世界像革命』(藤原書店、2001)『サルトル 21世紀の思想家』(共編、思潮社、2007)『21世紀の知識人』(共編、藤原書店、2009)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです