知の不確実性――「史的社会科学」への誘い

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イマニュエル・ウォーラーステイン著
山下範久監訳
滝口良・山下範久訳
四六上製　288頁
ISBN-13: 9784865780468
刊行日: 2015/10

歴史の重要性を強調する新しい社会科学論

●「世界システム論」「ジオカルチュア論」の提唱者ウォーラーステインの最新作！　「人文学」と「科学」への知の分割が限界を迎えた中で、社会科学が果たしうる役割とは何か。近代世界システムの知の刷新を提起した大著『脱＝社会科学』『新しい学』等の著作の最先端に位置し、それらを読み解く手引きとしても最良の一冊。
★国立大学の「文系学部再編」が激震を呼ぶ今、必読の一冊！

　序　時間の不確実性

第一部　知の構造
　第1章　科学主義に抗して科学を追求すること――現代における知識生産のディレンマ
　第2章　21世紀における社会科学
　第3章　社会科学における確実性の終焉
　第4章　ブローデルと「インターサイエンス」――会衆なき説教？
　第5章　時間と持続――非‐排中律あるいはブローデルとプリゴジーヌについての考察
　第6章　世界システム分析の軌跡、あるいはいかに理論となることに抗するか

第二部　個別科学（ディシプリン）のジレンマ
　第7章　科学を追い求める歴史
　第8章　歴史を書くということ
　第9章　グローバルな（諸）文化――救済か、脅威か、それとも神話か？
　第10章　社会学から史的社会科学へ――その可能性と障碍
　第11章　人類学、社会学、その他のあいまいな個別科学（ディシプリン）

　　訳者あとがき
　　謝辞
　　参考文献一覧
　　人名索引・事項索引

関連情報

私たちの眼前には三つのシナリオがある。第一のシナリオは、社会科学が自らの重さに耐えかねて崩壊するその日までその組織を繕いつづけるというものである。思うに、これが現在の私たちが歩んでいる道だ。（…）次に、社会科学者自身にかわって社会科学を再組織する「機械じかけの神」（おそらく「複数の神々」だろう）の介入があるのではないか。そうした者は教育官庁や大学行政のなかに見出される。学問的な空言を弄してその意図を隠してはいるが、こうした官僚たちの主要な関心は経費削減のための合理化にほかならない。彼らの介入によって起こりそうなことは、それぞれの組織のあいだで共通性のない別々の成果が出ることでしかなく、混乱にさらに拍車がかかることだろう。（…）実現の見込みは決して高くないが、ずっと望ましい第三のシナリオは、社会科学者自身が先頭に立って社会科学の再統一と再分割を行い、二十一世紀において知が意義ある進歩を遂げられるような、もっと知的な分業体制をつくりだすというものである。この再統一は、私たち全員が一つの任務に取り組んでいるという意識を持つことで達成されるのであり、この任務こそ私が史的社会科学と呼ぶものなのだ。
（本書より）

著者紹介

●イマニュエル・ウォーラーステイン（Immanuel Wallerstein）　こちらをご覧下さい。

【監訳者】
●山下範久（やました・のりひさ）
1971年大阪府生。ビンガムトン大学社会学部大学院にてウォーラーステインに師事，東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。北海道大学大学院文学研究科助教授を経て，現在，立命館大学国際関係学部教授。専攻・世界システム論，歴史社会学。
著書に『世界システム論で読む日本』（2003），編著に『帝国論』（2006，以上講談社選書メチエ），『現代帝国論』（2008, NHKブックス），訳書にフランク『リオリエント』（2000），ウォーラーステイン『新しい学』（2001）『時代の転換点に立つ』（2002）『世界を読み解く2002-3』（2003）『イラクの未来』『脱商品化の時代』（2004）『入門・世界システム分析』（2006），ミラン『資本主義の起源と「西洋の勃興」』（2011，以上藤原書店），ウォーラーステイン『ヨーロッパ的普遍主義』（2008, 明石書店）など。

【訳者】
●滝口良（たきぐち・りょう）
1977年兵庫県生。大阪外国語大学外国語学部卒業。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了。博士（文学）。現在，北海道大学大学院文学研究科共同研究員，在モンゴル日本大使館専門調査員。専攻は文化人類学。
主な業績に「つぎはぎの所有――社会主義体制下のモンゴルの都市部における「生の財産」と居住空間の構成」（『北海道民族学』（9）1-14，2013，北海道民族学会奨励賞受賞），「勤勉な転売屋――現代モンゴルにおける商売と倫理」（『日本オーラル・ヒストリー研究』（10）57-76，2014）など。

＊ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです