休息の歴史

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  • アラン・コルバン 著
  • 小倉孝誠・佐野有沙 訳
  • 四六変上製 176頁・カラー口絵4頁
    ISBN-13: 9784865784381
    刊行日: 2024/10

「永遠の安息」「隠居」から「治療」「疲労回復」「レジャー」へ
「休息」の意味するものは、 いかに変容してきたか?

産業化が浸透した現代社会では、疲労回復やレジャーのための“空白の時間”と捉えられがちな「休息」。しかし二千年の西洋史を振り返れば、「休息」には、「永遠の安息」「隠居」「失脚」などの“日常”の外への扉を開く、きわめて豊かな含意があった。「感性の歴史」の第一人者が、19世紀の大きな転換を見据えつつ、古代から現代までを俯瞰する。


目次


1 安息日と楽園の休息
2 永遠の安息――歴史の根本的な土台
3 休息と心の平穏
4 近世の隠居、引退あるいは「休息を編み出す技」
〈閑話休題〉カール五世
5 失 脚――休息の機会
6 監禁状態での休息
7 便利な品々と休息の新たな姿勢、18-19世紀
8 自然のなかの休息――前奏曲
9 大地の休息
10 日曜日の休息と「休息の悪魔」
11 疲労と休息
12 19世紀末から20世紀半ばにおける治療としての休息
結 論
謝辞
訳者あとがき(小倉孝誠)
原注
人名索引

関連情報

「自分には休む必要がある」と言うこと、また思うことは、ある欲望、ある感情を言いあらわすことだ。わたしたちはそれを何気なく、動物と同様人間の、基本的欲求の表現と見なしている。そのためこの欲求は、いわば歴史とは関係ないと思われるかもしれないが、それは誤りだ。休息の定義、また姿かたちは、諸世紀を通じて変化しつづけた。そしてしばしば、そうした定義や姿かたちは、もつれあい、重なりあい、ぶつかりあってきた。どう考えても、いつかは永遠の安息へと至りたいという願いと、「燃え尽き症候群」に陥らないために休みをとりたいと思うことは、別物である。

本書は「休息」について書かれた研究の成果――そもそも数はそれほど多くない――を詰めこんだものではない。狙いとするのは、俯瞰的な視線でもって、休息の姿かたちや技法の起源また発展を、時代を通じてあきらかにすることである。起源や発展のもっとも力強い瞬間と同時に、場合によっては衰退の時期も見定めるつもりだ。すると重なり合い、革新、停滞の歴史のうちに、「文化の遺物」というかたちで、その時代その時代が浮かびあがってくるはずである。

目的はしたがって、休息が救い、つまり永遠の幸福の状態と同一視されていた時代から、「大いなる休息の世紀」――簡単に言ってしまえば19世紀最後の30年間から20世紀なかばにかけての時代――へといたる道筋を理解してもらうことである。これに重なるように、多少時間の前後はありつつも、海辺というあたらしい快楽の場の創造、日焼けブームが象徴する太陽のもとでの休息の覇権、休息のあらたな神殿であるサナトリウムで行われる治療目的の休息、はたまたフランスにおける有給休暇――仕事による疲労を癒すことを目的とした休息の時間――の需要の広がり、といったものが出てくることになる。

このような道のりをたどるには、休息の起源へと立ちかえる必要がある。西洋世界の根底をなすあのいにしえの、聖書の時代へと。
(本書「序」より)

著者紹介

【著者紹介】
●アラン・コルバン(Alain Corbin)
1936年フランス・オルヌ県生。カーン大学卒業後、歴史の教授資格取得(1959年)。リモージュのリセで教えた後、トゥールのフランソワ・ラブレー大学教授として現代史を担当(1972-1986)。1987年よりパリ第1大学(パンテオン=ソルボンヌ)教授として、モーリス・アギュロンの跡を継いで19世紀史の講座を担当。現在は同大学名誉教授。
“感性の歴史家”としてフランスのみならず西欧世界の中で知られており、近年は『身体の歴史』(全3巻、2005、邦訳2010)『男らしさの歴史』(全3巻、2011、邦訳2016-17)『感情の歴史』(全3巻、2016-17、邦訳2020-22)の3大シリーズ企画の監修者も務め、多くの後続世代の歴史学者たちをまとめる存在としても活躍している。
著書に『娼婦』(1978、邦訳1991・新版2010)『においの歴史』(1982、邦訳1990)『浜辺の誕生』(1988、邦訳1992)『音の風景』(1994、邦訳1997)『レジャーの誕生』(1995、邦訳2000・新版2010)『記録を残さなかった男の歴史』(1998、邦訳1999)『快楽の歴史』(2008、邦訳2011)『知識欲の誕生』(2011、邦訳2014)『処女崇拝の系譜』(2014、邦訳2018)『草のみずみずしさ』(2018、邦訳2021)『雨、太陽、風』(2013、邦訳2022)『木陰の歴史』(2013、邦訳2022)『未知なる地球』(2020、邦訳2023)『1930年代の只中で』(2019、邦訳2023)『疾風とそよ風』(2021、邦訳2024)など。(邦訳はいずれも藤原書店)

【訳者紹介】
●小倉孝誠(おぐら・こうせい)
1956年生。慶應義塾大学教授。専門は近代フランスの文学と文化史。87年、パリ第4大学文学博士。88年、東京大学大学院博士課程中退。
著書に『身体の文化史』『愛の情景』(中央公論新社)、『犯罪者の自伝を読む』(平凡社)、『革命と反動の図像学』『ゾラと近代フランス』(白水社)、『歴史をどう語るか』(法政大学出版局)など。また訳書に、コルバン『音の風景』『風景と人間』『空と海』『草のみずみずしさ』(共訳、以上藤原書店)、フローベール『紋切型辞典』(岩波文庫)など、監訳書に、コルバン他監修『身体の歴史』(全3巻、日本翻訳出版文化賞受賞)『男らしさの歴史』(全3巻)『感情の歴史』(全3巻、以上藤原書店)がある。

●佐野有沙(さの・ありさ)
1991年生。慶應義塾大学通信教育部講師。専攻は前衛芸術運動。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。2018年パリ第3大学博士課程留学。主な論文に「『ジャックマン大通り』、偽名の楽しみ」(『慶應義塾大学フランス文学研究室紀要』2019年12月)、翻訳に「ピエール・ジュルド『闘牛士を剥製にする』(抄訳)」(『慶應義塾大学日吉紀要フランス語フランス文学』2022年10月)、バジル・ドガニス監督『メルテム――夏の嵐』(2020)などがある。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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